元主要4団体の世界ミニマム級王者高山勝成(34=名古屋産大1年)が、このほどWBO王座を返上し、プロを引退した。アマチュアとして、20年東京五輪出場を目指すためだという。

 「1人のアスリートとして、自国開催のスポーツの祭典で思い切り戦ってみたい。東京五輪の時、僕は37歳。年齢的にラストチャンスと思う」。そもそも東京の五輪招致が決まった頃から考えはあったようで、16年リオデジャネイロ五輪でボクシングのプロ出場が解禁となり、今回の決断に踏み切ったわけだ。

 ところが、アマチュアの統括団体・日本ボクシング連盟は“元プロのアマチュアボクサー”を認めていない。同連盟の山根明会長は高山のアマ転向承認を「1000%ない」という断固たる構えを見せ、リオ五輪からのプロ解禁の流れも「それは世界の話で、日本は別」と譲る気配はない。

 山根会長に話を聞いた。

 「プロはお金のために戦うけど、アマは無償で戦うんです。日本のアマチュアはみんな、五輪を目指して頑張ってる。それをプロが『東京五輪だから、自国開催だから出場したい』なんてね。彼はそもそもアマチュア出身じゃない。アマチュア界に貢献したこともない。指導者になりたいというなら考える余地はあるけど、それも4~5年実績を積んでの話。まして選手としてリングに上がるなんて、あり得ない」-。

 個人的に、山根会長に賛同する。“そもそも論”として、五輪はアマチュアの祭典やったはずです。それがテニス、サッカーなどにプロが参入した。ゴルフなんて112年ぶりに競技復帰したと思ったら、出場資格はプロの世界ランクという物差しになった。しかも団体戦はなく、個人戦オンリー。五輪の商業路線に、金銭以外の名誉を求めるプロ選手が乗っかったためやろうけど「4年に1度を目指してやってきたアマチュアはどうなるの?」と思いませんか? テニスには4大大会、サッカーにはW杯、ゴルフにはメジャーがある。プロとして十分に成熟したフィールドがあるのに、何でアマチュアの祭典にまで手を出す必要があるの? ボクシングもそれと一緒でしょ?

 高山の意欲を否定はできません。どう考え、どう動こうが個人の自由です。でも、仮に高山のアマ転向が実現した場合、同じ階級で五輪を目指してきたアマチュアはどう思うか? 

 五輪はやっぱり、アマチュアのものであるべきやと思うんですけどねえ。【加藤裕一】