WBA世界フライ級7位の山口真吾(28=渡嘉敷)が急逝した元世界王者に勝利をささげる。29日の同級王者の坂田健史(28=協栄)戦を前に28日、都内で計量に臨んだ。02年2月の世界初挑戦の相手だった元WBC世界ライトフライ級王者の故崔堯三さん(享年33)は今年1月死去。6年ぶり2度目の世界挑戦で、世界の厳しさを教えてくれた崔さんに成長した姿を見せ、王座を初奪取する。

 失敗は繰り返さない。02年2月以来、6年ぶり2度目の世界挑戦。山口は「調整は順調。体調も万全。全力でベルトを取りに行く」と決意を込めた。ライトフライ級から1階級上げ、減量苦から解放された。過去最高の状態で、リングに立てる。

 世界初挑戦した相手は、もうこの世にはいない。6年前に挑戦した元WBC世界ライトフライ級王者の崔さんは今年1月3日、死去した。昨年12月の試合直後、リング上で昏睡(こんすい)状態に陥り、そのまま帰らぬ人となった。山口は「びっくりしました。世界のレベルを教えてくれた人ですから」と当初は戸惑いを隠せなかった。

 崔さんには10回TKO負けした。パワー不足、ガードの甘さ、パンチの精度の低さ。生きた教材として、世界のボクシングを学んだ。以来、崔さんの背中を追いかけた。03年5月、東洋太平洋王座奪取。その後もメキシコ合宿、パワートレーニングを繰り返し、崔さんとの差を埋めるべく努力してきた。

 坂田を破って世界王座初奪取となれば、WBC王者内藤大助、WBA1位亀田興毅らとのビッグマッチも見える。「勝つことで、崔さんに6年間の成長を見せたい」。ボクシングの厳しさを教わった「恩師」に恩返しの勝利を贈る。