<プロボクシング:WBC世界フェザー級タイトルマッチ12回戦>◇16日◇東京・代々木第1体育館

 粟生隆寛(帝拳)は王者オスカー・ラリオス(メキシコ)からダウンを奪いながら1-2判定で惜敗した。

 悔し涙が流れた。無念の控室。KO防衛を飾ったアニキと慕う長谷川の「隆寛に勇気をもらった。負けたけど必ず世界王者になる」との声が聞こえた。粟生はたまらず、タオルで顔を覆う。「もう1歩、もう1発が出なかった」とうめいた。

 初回から強打のラリオスを積極的に攻め立てた。4回には右フックでダウンを奪取。5回にも左ストレートでふらつかせた。KO寸前まで追い込んだが、仕留めきれない。逆にジャブを確実に当てた王者に中盤からポイントを奪われて接戦を落とした。

 進化は見せた。日本王者だった4月、当時東洋王者の榎戦で、決め手を欠いてドロー。世界を取るため「負けないボクシング」から攻撃的なスタイルへの転換を決意。相撲のような押し合いを取り入れるなど、パワー強化を図ってきた。王者と経験の差こそ出たが、2階級制覇王者と最後まで互角に打ち合った。

 高校1年の00年10月からの連勝も74でストップ。夢のベルトを逃し、記録も止まったが、記憶に残るファイトで、高校6冠王のアマエリートの24歳が世界の可能性を示した。【田口潤】