18日のWBC世界バンタム級王座戦でアルバロ・ペレス(27=ニカラグア)の挑戦を受け、10度目の防衛を目指す王者長谷川穂積(29=真正)が17日、神戸市内で前日計量を一発パスした。前日16日は350グラムオーバーだったが、一晩で450グラムの減量に成功。計量後は泰子夫人(30)が握った「V10おにぎり」をパクリ。2人の子どもからは激励の手紙をもらった。「家族愛」を支えに、日本人では具志堅用高以来2人目の「2ケタ防衛」に挑む。

 ほおのこけた長谷川が、いたずらっぽく笑った。減量の苦しみを乗り越え、リミット100グラムアンダーの53・4キロで一発パス。いすに座ると「おにぎり」を取り出した。白米にのりで「V」もう片面に「10」。泰子夫人から渡されたものだ。「妻も一緒に減量してくれて…2人でやってきたので。すごく助かりました」。自慢げに周囲に見せて、愛情とともにほおばった。

 約10年前のデビュー時は減量も3キロで済んだが、肉体が進化して今は12キロ。苦しみを分かち合おうと、今では愛妻も一緒に「ダイエット」する。「『お菓子を食べないから、絶対に勝たせてくれ』と祈ってくれてるみたいです。かなり頑張ってますね」。泰子夫人も約1カ月戦って、5~6キロは落ちるという。

 「内助の功」はほかにもある。今回は料理学校に通い、ヘルシーで食べ応えのあるメニューを学んだ。「牛肉の白菜蒸し」(118キロカロリー)「こんにゃくラーメン」(50キロカロリー)など新作が登場したおかげで「飽きさせないようにしてくれた。めちゃうまいっすよ」と感謝した。

 前日16日に29歳になった。帰宅すると、妻と長男大翔(ひろと)くん(6)と長女穂乃ちゃん(4)が慌てていた。「仕掛けの最中だったみたいで。文句言われましたよ」。ケーキなしのローソクに息を吹きかけ、愛息と愛娘からは手紙をもらった。「大翔は『おめでとう。試合頑張ってね』と。穂乃のは何書いてるかわかりませんが」。夫人からプレゼントされた財布に、大事にしまっている。

 この日は誕生日を知ったWBCホセ・スレイマン会長からの「お祝いメール」も披露された。早くも祝福ムードに包まれるが、もちろん気は緩めない。「見ている人が感動できて、自分も感動できるように。倒します!」。10度目の防衛戦。歴史に名を残す戦いが、いよいよ始まる。【近間康隆】