<プロボクシング:WBA世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦>◇20日◇タイ・マハーサーラカーム

 32歳で世界王座に初挑戦した木村章司(花形)は、4回KO負けに終わった。敵地で王者プーンサワット・クラティンデーンジム(29=タイ)に初回から打ち合いを挑んだが、4回に3度のダウンを奪われて、2分23秒、力尽きた。18年ぶり日本人7人目の海外での世界王座奪取はならず。木村は試合後、引退を示唆した。プーンサワットは3度目の防衛に成功。木村の戦績は23勝(9KO)4敗2分け。

 奇跡は起きなかった。試合前日に「奇跡を見せます」と語っていた木村だったが、王者の壁は高かった。4回に右アッパーで最初のダウンを奪われると、そこから計3度ダウン。プロ29戦目で初のKO負けを喫した。世界初挑戦での王座奪取に失敗し日本人の海外挑戦も30連敗となった。

 覚悟を決めて敵地に乗り込んでいた。小・中学校時代の卒業アルバムに「無敗で世界王者になる」と記した。だが、09年12月には日本王座から2度目の陥落となる3敗目を喫した。世界挑戦の機会もなく、年齢はすでに32歳。引退も頭をよぎった。

 そんな中、花形会長をはじめとした周囲は、木村を見捨てなかった。「自分の気持ちの弱さを知った。打たれないようにしようとか、安全に進めていこうというのがあった。殻を破らないといけない」。迷いは消えた。元統一ヘビー級王者マイク・タイソンにあこがれた少年のころの気持ちも取り戻していた。

 プーンサワットは強敵と知っていたが「ダウンをしたことがないとかプライドは捨てる。ダウンしても奪い返せばいい。勝ちにいく」と腹をくくった。その言葉通り、果敢に打ち合ったものの「右ストレートを当てても倒れない。あれで倒れないなら仕方ない。こりゃ強いやと思った」。そして4回、タイの屋外リングに沈んだ。花形会長は「最高に良い試合をした。いろんなハンディがあったけど、よくやった」と健闘をねぎらった。

 19歳で上京し、現在は空調設備会社に勤務しながら世界王者になる夢実現に向け家族と戦ってきた。試合後、日本で勝利を祈っていた奈美夫人には「人生変えられなかったわ。ごめん」と電話で告げた。そして「悔いはありません。力は精いっぱい出した。基本的には(現役を)辞めます」と引退をほのめかした。