WBA世界スーパーフライ級休養王者の清水智信(30)が、プロレスラー仕込みの「剛腕」で王座統一を狙う。2日、都内で行われた同級正規王者テーパリット・ゴーキャットジム(23)との王座統一戦(4日、横浜アリーナ)の調印式に出席。大日本プロレスに所属するMEN'sテイオー(45)の指導で肉体改造に成功し、破壊力を増したパンチで打ち合う覚悟を示した。

 真の王者を決める舞台だからこそ、真っ正面から受けて立つ-。王座決定戦を間近に控え、清水は覚悟を決めた。調印式でテーパリットにKO勝利を通告されても、甘いマスクを紅潮させることなく「僕はパンチ力も、カウンターの精度も上がった。勝って、王座を統一する」と、淡々とした口調で言い切った。

 軽快なフットワークを武器とするアウトボクシングで「スピードスター」と呼ばれてきた。だが、今回はそれだけではない。「体が大きくなったし、スーパーフライ級のパワーも付いた」。04年に所属ジムの同僚が働いていたスポーツジムでMEN'sテイオーと知り合って以来、週に2~3回、フィジカルトレーナーとして指導を受けてきた成果が表れはじめた。

 特徴的なのが太ももや背中、腰回りの筋力増強に効果があるバーベルを担ぐスクワット。通常、体重の1・5倍のバーベルを使用するため、同級のリミット52・1キロならば78・15キロが目安となる。それが今回の調整で120キロまで可能に。パンチを打つ際の踏み込みに力強さが備わった。金子賢司マネジャーも「ミットに伝わってくるパワーが格段に違う」という。

 昨年8月末に念願の世界王座を獲得しながら、けがを理由にWBAから不本意な休養扱いにされた。激しく気落ちし、目標を見いだせない日々を過ごしたが、その間もフィジカル強化を含めた基礎練習は欠かさなかった。至近距離での打ち合いはテーパリットが得意とするスタイルだが、清水は「まずは、前に出てくる相手の動きを止めること。距離を取るための当てるだけのパンチではなく、確実にダメージを与えたい」。新たな力を備えた拳で、「休養」の2文字を、吹き飛ばしてみせる。【山下健二郎】

 ◆清水智信(しみず・とものぶ)1981年(昭56)6月28日、福井市生まれ。北陸高-東農大。04年3月プロデビュー。08年4月日本フライ級王座獲得。昨年8月、3度目の世界挑戦でカサレスを破り、WBC世界スーパーフライ級王座獲得。168センチの右ボクサー。