WBA世界ライトフライ級8位田口良一(28=ワタナベ)が、原点の地でジム3人目の世界王者を狙う。大みそかの初挑戦に向け、26日に都内のジムで練習を公開した。国内では男子10度目のトリプル世界戦で、先陣を切って王者アルベルト・ロセル(36)に挑む。会場の大田区総合体育館は中3で初めてグローブをはめた思い出の場所。来年ジム創設40周年に花を添える、4ジム目の現役王者トリオ実現を目指す。

 田口にとって、世界戦の会場は忘れられない原点だ。08年までは大田区体育館としてスポーツ教室が開かれていた。中3の時、ボクシング教室へ2週間に1度通った。ゲームソフトを買って漫画「はじめの一歩」を知り、興味を持ったのが始まり。初めてグローブをつけた場所だった。

 「最高の巡り合わせ。会場を聞いた時に運命を感じ、運を持っていると思った」。成人式もこの会場だった。2年前に改築されたが、これまで人生の節目を迎えてきた場所で「人生が変わるチャンス」が来た。教室で手ほどきしたのは大田区連盟の高木会長。「デビューから見に来てくれ、恩返しもしたい」と話す。

 そのための準備は精力的にこなした。10月から前日25日までに160回のスパーリングを消化した。通常100回。しかも相手は井上、八重樫、ゴンサレスら、階級が上の強豪世界王者ばかり。「メンタルが強くなり、自信になった」と言う。

 国内男子で10度目のトリプル世界戦となる。内山、河野と同じジムの3人出場は2度目。全員勝てば初めてで、4ジム目の同時世界王者トリオになる。それも先陣の田口次第。渡辺会長は「3人になったら、ジム40周年だし、盛大にパーティーを」と期待する。

 練習では切れのいいパンチをミットに打ち込んだ。「パンチ力は上がった。上下に打ち分け、得意ボディーでダウンはとれる」。井上には踏み台にされたが、今度は自らが頂点に立つと確信している。【河合香】

 ◆田口良一(たぐち・りょういち)1986年(昭61)12月1日、東京都大田区生まれ。04年にワタナベジムへ入門し、アマ2戦2勝(2KO)。06年プロデビューで1回KO勝ち。ライトフライ級で07年全日本新人王。昨年4月に2度目の挑戦で日本同級王座獲得。同年8月に井上に判定負けで初防衛失敗。166センチの右ボクサーファイター。家族は両親と姉2人。

 ◆3人以上が同時に世界王者となったジム

 3つのジムが達成した。93年に鬼塚、勇利、ナザロフが王者となった協栄が最初。帝拳は09年にリナレス、西岡、粟生で達成し、12年には西岡、粟生、山中、五十嵐で最多4人王者となるなど4回ある。13年には亀田の亀田3兄弟も同時王者となった。