関脇栃煌山(28=春日野)が、全勝の横綱鶴竜(29=井筒)を止めた。焦らず攻めて押し出し、優勝決定戦まで持ち込んだ12年夏場所以来となる9日目での勝ち越しを決めた。部屋頭の自覚が芽生え、大関を目指す強い気持ちも再燃。1敗をキープして、今日10日目はただ1人無傷9連勝の横綱白鵬(30=宮城野)に挑む。

 座布団が舞う中、栃煌山がドヤ顔で花道を引き揚げる。立ち合いで押し負けず、全勝の鶴竜を引かせて奪った殊勲星。1敗を守り「立ち合いで低く当たって、下から下から攻められた。今場所で一番いい相撲」と胸を張った。

 優勝決定戦で旭天鵬に敗れた12年夏場所も、同じ9日目での勝ち越しだった。「あれから絶対強くなってると思う」と言うが、大関候補とされながら、その間12場所務めた三役で2けた勝利は3度だけと伸び悩む。大関への思いは「常にあるのはある」。その自信とは裏腹に、同学年の豪栄道、5歳下の23歳照ノ富士に昇進を先越された。

 悔しさから、もう1度、自分を見つめ直した。「四股やてっぽうも、無造作にやるだけじゃ上に上がれない」。稽古場では、態度も変わった。最近は若い衆とのぶつかり稽古でも「いい当たりだ!」と、励ます声が出始めた。部屋頭としての自覚が、精神面を成長させた。

 「昔は周りのことは考えなかった。でも、声を掛けることで、自分もしっかりやらなきゃいけないと思うようになった。手本にされているわけだから」。場所の祝賀会で関係者に「演歌も覚えて」と懇願されても断固「明日があるさ」しか歌わず、締め込みも新十両から9年間、同じ物を使い続ける頑固男。しかし、強くなるため、少しずつ柔軟に変化もしつつある。

 今日10日目は、ただ1人全勝の白鵬戦。V争い生き残りへ「勝てば残るし、負ければ後退。絶対勝つと、毎日そう思ってます」。言葉に力を込めた。【木村有三】