東十両14枚目の琴恵光(24=佐渡ケ嶽)が、十両で初めて勝ち越した。西十両6枚目の旭秀鵬(27=友綱)を押し出し。十両3場所目で「三度目の正直」に「うれしいです。シンプルに、うれしいですね」と喜びをかみしめた。

 14年九州、15年春の過去2度は5勝と4勝止まり。8場所ぶりに復帰した今場所は、心持ちが変わっていた。「楽しんで、楽しみながら取れた。硬くならずに」。以前は「勝たなければ」という重圧から体が硬くなり、思うような力を発揮できなかった。その考え方を変えてくれたのは、部屋の大関琴奨菊(32)の存在だった。

 大関の付け人を務めた今年初場所で、日本出身力士10年ぶりの優勝を間近で見た。「優勝したら日本中がこんなにも注目するんだ。頑張ったら、こんなにもいろんな人から声を掛けてもらえるんだ、とすごく刺激になりました」。そして、大関の姿勢に感化された。

 「大関にはルーティンが一日中ある。私生活からやっている。自分も今場所、少しマネしながらやったんです。ストレッチをして、その次に準備運動…と、流れを1つ1つ決めて。大関まではしっかりとできなかったけど、できるところをやった。そうしたら、流れが変わらないので、気持ちのブレがなくなりました」。

 176センチ、119キロ。決して恵まれた体格ではないが、うれしい十両初勝ち越しは、こうして生まれた。「あそこで付け人についていて良かったなと思いました」。残りあと2日も、気持ちを浮つかせることなく臨む。