[ 2014年6月12日7時42分

 紙面から ]地球儀のブラジルを指さす岡崎

 日本が勝つために、エゴイストになる!

 2大会連続W杯に出場する日本代表FW岡崎慎司(28=マインツ)が、日刊スポーツに独占手記を寄せた。今季はブンデスリーガで、欧州主要リーグ日本人最多記録となる15得点を記録し、フル回転の活躍。その裏には、前回大会では直前で先発から外された悔しさと苦悩の先に見いだした「エゴイスト」の精神があった。

 前回の南アフリカワールドカップ、大会が始まる前に僕は自分自身に負けていた。

 大会直前まで1トップをやっていたけど、スイス合宿中のコートジボワール戦で何もできず、本大会では先発を代えられてしまった。4年前は遠慮がちな1トップだったなと、今では思う。もっとがむしゃらに吹っ切れるようなプレーができていればよかった。

 実はあのとき、コンディションもよくなかった。高地の順応に遅れ1回走ったら息が上がってしまう状態だった。後から聞いた話だと、検査の数値も良くなかったらしい。

 そして、プレッシャーを受け流すすべも持っていなかった。キープする場面でミスをして、日本が苦しくなる。「本当に俺でいいんかな?」「俺が1トップでこの先、世界で戦えるのか?」「俺は日本代表として戦えるレベルに達しているのか?」

 そのあたりから変に考え込むようにもなっていた。フィジカル的だけでなくメンタル的にも、がむしゃらにできなくなり、最後はプレッシャーにつぶれされてしまった感じだった。

 そのときは欧州でやっていたわけじゃないし、自信もなかった。明らかに自分の実力不足。コートジボワール戦を境にメンバーの入れ替えが行われた。自分はスタメンからベンチメンバーへ。「俺だけが悪いわけじゃないやん」って気持ちもあったけど、それ以上にホッとした自分がいた。その時点で負けたと思った。自分自身がただただ弱かった。そして、海外リーグに挑戦しなくてはならないと強く思った。

 南ア大会の半年後、ドイツに行ってから3年半が過ぎた。日本に居たころは「エゴイスト」という言葉自体好きじゃなかったけど、ドイツに来てから必要かなって思えるようになった。サッカーをやっていると、理不尽なことがたくさんある。自分はやっているつもりでも、試合で使われないことや「なぜ、パスを出さない?」「なぜ、カバーしない?」「なぜ、フォローしない?」って、言い出したらきりがない。

 でも、それは結局誰かに求めてしまっているということ。求めるのではなく自分自身が納得のいくことをやれているのかと考えるようになった。いい意味で、エゴイストは必要やなって。僕はポジティブなエゴイストもあると思う。特に日本人は、どうしても周りに合わせてしまうから、そればかりだと結局損するのは自分。まずは周りを気にせずに自分のやれることを1つ取り組んでみようと思った。

 自分がやれることは、やはり裏を狙い続けること。サイドでゲームつくることを一番に考えて、次にゴールのことを考えるのでは相手の脅威になれない。

 自分の考えが間違っていなかったと手ごたえをつかめたのはコンフェデ杯だった。裏に抜ける動きを繰り返していると強豪国のDFが裏を怖がるようになり、簡単に足もとでボールをもらえるようになった。そして、ゴールも決められた。たとえエゴイストであってもゴールを狙い続けることが、チームのためになると実感できた。

 そして今季移籍したマインツでも自分の考えを曲げずに1シーズン取り組んだ。チームの成績は7位となり欧州リーグの出場権を獲得。個人としても15ゴールすることができ、自分の考えが1つの形になったシーズンを送れた。

 南アフリカから4年。あのとき、上を見すぎて、背負い込み過ぎて、自分じゃなくなった。僕の考えをブラジルW杯でも貫き通したい。自分のやれることを1試合1試合やればいい。そう思ってこの4年間ずっとやってきた。だから気負うこともない。1つはっきりと言える。あのときの僕とは、もう違う。(日本代表FW)