<映画大賞:助演男優賞>

 日刊スポーツ映画賞助演男優賞は「沈まぬ太陽」(若松節朗監督)の三浦友和(57)が受賞した。

 原作者、山崎豊子氏の思い入れの強い敵役が行天四郎。若松監督が三浦を指名した。「原作を読んで、魅力的だと思った。悲しくて、哀れな人。大変光栄に思いました。ただの悪に映らないように心掛けました。悪ですけど、あの時代の日本の企業のシンボリックな人ですから」。

 若い時から正統派の二枚目。だが、酔いどれの中学教師を演じた85年の映画「台風クラブ」の故相米慎二監督との出会いが転機になった。「相米監督が導いてくれました。20代の清く正しく美しくの役は、あまり楽しくなかった。でも、あれが基礎。ああいうイメージがあって、こういう敵役をやる面白さもある。一番のポイントは(愛人の)松雪さんとのホテルでのシーン。行天という人の弱点を、心情的に出せなかったら終わりだな、と」。お色気シーンが、もっとあってよかったのではと聞くと「そうですね(笑い)」。

 現在57歳。今年5月に高校時代からの友人、忌野清志郎さんを亡くした。「彼だけではなく、親しい友人を数人亡くしている。その時はショックなんですけど、50年生きても、80年生きても、100年生きても、人生は短い。多少、長く生きたからといっても、価値がなければ。これからも生きていくのなら、もうちょっと、自分にとって、他人にとっての価値のあるように生きたいですね」。

 世紀のカップルといわれた山口百恵さん(50)と80年に結婚した。長男はミュージシャン、次男も役者デビューが決まった。「夫婦で、映画にしょっちゅう行きます。映画館は暗いですからね(笑い)。下の(息子)が俳優になったけど、自分の芝居は見てほしくない。恥ずかしいんですよ、本当に」。

 演技派として高い評価を受けての受賞だが、そのさわやかな語り口は20代の時のままだった。【小谷野俊哉】