福山雅治(47)が、一番好きなラブソングに山崎まさよし(44)の「One more time One more chance」を挙げていた。主演ドラマ「ラブソング」(フジテレビ系)の番宣で出演した情報番組でのコメントだ。吹石一恵(33)との結婚からまだ7カ月のホットな時期に、それでも失恋ソングなのだなあ、と思った。

 「失恋は嫌いなのに失恋ソングは好き」は万人に当てはまる定理なのかもしれない。

 山崎が主演した97年の映画「月とキャベツ」の主題歌だった「One more-」は当時、ゆっくりとチャートを昇るロングヒットとなり、ユーチューブの動画再生回数は現在までに1000万回超というから人気は根強い。

 恋人を亡くし、季節の移ろいにむなしさを覚えながら、街角に無意識に恋人の面影を探してしまう。ざっくりとし過ぎて申し訳ないが、そんな内容である。「死」という決定的な別れの後のせつない思いが紡がれる。数分間の歌だからこそ成立するショート・ラブストーリーだと思っていた。

 そんな「One more-」の世界を長編映画にしてしまったのが、韓国・中国合作の「きみの声を探して アフター・ラブ」(5月14日公開)だ。

 聴覚障害でパイロットから地上勤務を余儀なくされた男は半ば人生を諦めた心境で見合い結婚をする。明るくけなげな妻に好意は持つが本気で愛することが出来ない。そんな妻が突然死んでしまう。

 残されたボイスレコーダーには彼が気づけなかった妻の深い思いや過去の彼との接点、知らなかった因縁が収められていた。遺品を手に彼は妻の人生をさかのぼる旅に出る。

 演じるのは「殺人の告白」(12年)が記憶に新しいパク・シフ(38)とヒットドラマ「宮-Love in palace」(06年)のユン・ウネ(31)だ。

 ソフトなイメージのシフは序盤の自暴自棄な演技にも「根はいい人」をのぞかせて後半の相手無きラブストーリーにつないでいく。幅広い役柄をこなしてきたウネは角度によって丸顔に見えたり面長に見えたりする不思議な人だ。薄幸の中に喜びを漂わせる目。何かを伝えようとするかすかに開いた唇…回想シーンと行き来する構成で、表情、しぐさを時間軸に正確に合わせた好演だ。

 フランス資本で作られた「プラスチック・ツリー」で知られるオ・イルソン監督は現在と過去を巧みに紡ぎ、力量をみせる。終盤には泣かせどころ満載だ。

 近作では、女性同士の恋愛映画「キャロル」(トッド・ヘインズ監督)にも意外なほどドキドキさせられた。ケイト・ブランシェットがアカデミー主演女優賞にノミネートされた秀作だったが、ルーニー・マーラとの目のやりとり、張り詰めた空気は、自分とは違う性的嗜好(しこう)の壁を越えて伝わってきた。

 「キャロル」の禁断の恋、そして今作のかなわぬ再会…。突き詰めてみればその根底にはラブストーリーの定型がある。【相原斎】