人気スパイ映画「007」シリーズで、6代目ジェームズ・ボンドを演じてきたダニエル・クレイグの卒業が現実味を帯びてきました。

 クレイグは「007 カジノ・ロワイヤル」(06年)でボンド役に抜てきされ、初の金髪ボンドとして注目を集めました。「慰めの報酬」(08年)「スカイ・フォール」(12年)「スペクター」(15年)と、その後も3作品に出演し、人気を不動のものとしています。しかし、「スペクター」の公開後からボンド役からの引退が取りざたされるようになり、去就が注目されています。一部報道では残り2作品の契約が残っているとも伝えられていますが、本人が降板を示唆する発言をしていることからボンド役引退が濃厚とみられていました。そんな中、製作サイドから残り2作品の出演料として1億ドルを提示されたものの、「もう疲れた」とクレイグは首を縦に振らなかったと英デイリー・メール紙が報じました。これにより、報酬の問題ではなく、本人にもうボンド役をやる気がないことが明らかとなり、引退は確実となってきました。

 一連の報道を受け、ファンの間では早くも次のボンド役に相応しい俳優は誰かという論議が始まっています。これまでもマスコミの間で複数の俳優が候補として取りざたされていますが、もっとも注目される有力候補を紹介します。

 英ブックメーカー2社が、最もふさわしい俳優として名前をあげているのがトム・ヒドルストン。イギリス出身のヒドルストンは、「マイティ・ソー」シリーズで演じるソーの弟ロキ役でブレイクしました。ドラマ「ナイト・マネジャー」でスパイ役も演じており、その演技も絶賛されています。すでに同シリーズ前2作でメガホンをとったサム・メンデス監督とミーティングをしたとの報道もあり、現時点では最有力候補と言えます。

 黒人初のボンドが誕生するのか注目されているのは、イドリス・エルバ。「パシフィック・リム」(13年)のスタッカー役や「マイティ・ソー」シリーズのヘイムダル役などで知られ、近年は目覚ましい活躍を遂げている俳優の一人。14年にソニー・ピクチャーズのハッキング事件によってリークされたメールで、エルバがボンド候補にあがっていることが発覚。これまで一貫して白人俳優が演じてきたボンドを黒人が演じることになるのか、論争が巻き起こりました。

 ファンの間で人気が高いのは紳士的でセクシーさも兼ね備えているダミアン・ルイス。ドラマ「ホームランド」でニコラス・ブロディを演じて人気のルイスは、エミー賞やゴールデン・グローブ賞で主演男優賞も受賞する実力派。英メディアがボンド役はルイスに内定と報じたこともあり、本人も意欲的な発言をしています。

 最後は昨夏に大ヒットした「マッドマックス 怒りのデス・ロード」に主演したトム・ハーディ。今年のアカデミー賞作品賞候補にもなった「レヴェナント 蘇えりし者」や「ダークナイト ライジング」などに出演して近年大成功を収めているハーディは、その演技力もさることながら危険な香りと存在感を兼ね備えているとファンの間でも人気です。

 記念すべきシリーズ25作目となる次回作では、誰がボンド役を演じるのか乞うご期待です。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)