「竜二」(83年)は忘れがたい作品だ。ドンパチのない異色のヤクザ映画には、高校の頃から東映映画に憧れ、脚本・主演を兼ねて自主製作した金子正次さんの思いが詰まっていた。
金子さんは公開間もなく33歳で亡くなった。がんだった。取材で自宅を訪れたことをよく覚えている。まるで竜二の住まいそのままの木造アパートにスタッフが集まり、遺骨が置かれた部屋には劇中で金子さんが着ていたジャンパーがかかっていた。その光景は駆け出し記者の目にしっかり焼きついた。松田優作さんらにみとられた、とも聞いた。改めてその人望と才能の大きさを思った。
「竜二」のメガホンを取ったのは川島透監督。主題歌は萩原健一の「ララバイ」。アングラ劇団から転じて、まだ知名度もなかった金子さんの周りには気鋭の顔触れがそろっていた。
43年の時を経て「RYUJI 竜二」(30日公開)を撮った水田伸生監督らスタッフには相当な覚悟が必要だったと思う。脚本執筆に7年を要し、主演を引き受けた柳楽優弥もその一転二転の過程を並走したという。結果、作品にはオリジナルへのリスペクトがにじみ、やりとりの細部にほどよく今風のアレンジがほどこされている。
舞台は昭和59年(84年)から平成2年(90年)の新宿歌舞伎町。腕っぷしが強く、情に厚い竜二は舎弟に慕われ、文字通り肩で風をきっている。一方で、愛妻まり子と出会い、息子も生まれる。そして、ある事件をきっかけに足を洗うことを決意する。酒屋で働き、つつましく、穏やかに暮らし始める。が、彼が抜けたことで、支えを失った舎弟や兄弟分の惨状を知り…。
木造アパートの自宅描写が時代を映し、質素だが整った内装が金にこだわらない竜二の粋な部分を印象づける。よどみない言葉や動きに、柳楽がしっかりと「竜二」を染み込ませているのが分かる。その心を読むように行動するまり子に川栄李奈。まるで手に取るように夫婦の心持ちが伝わり、心揺さぶられる。2人が目だけで気持ちを交わす終盤のシーンには、玉置浩二の「メロディー」(BE:FIRSTのJUMONがカバー)が挿入される。水田監督の心憎い演出だ。
舎弟役の萩原利久とJUNONに気合を感じ、薬物に溺れる兄弟分の痛々しさを三宅健が全身で演じている。
時代を感じさせながらも決して古くさくない衣装も絶妙で「柳楽竜二」は終始カッコいい。金子さんの思いは今の世に焼き直され、引き継がれている。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)




