ジャニーズ事務所のタレントが東宝系劇場で座長公演を行う時、記者招待日にプログラムとともに配られれるものがある。東京・京橋にある和菓子店「桃六」の茶飯弁当だ。

 蒸したもち米に特製しょうゆダレを加えた茶飯に、レンコン、ゴボウ、タケノコ、ニンジン、シイタケ、コンニャクの煮物と肉団子、卵焼き、サツマ揚げなどのおかずが詰まっている。この弁当は多くの芸能人に愛されているが、特に森光子さん(享年92)がこよなく愛した。約25年前に知人から楽屋見舞いで差し入れされ、すっかり気に入った。以来、自分の公演の記者会見や舞台の節目に取材が入った時は、この弁当を記者たちに振る舞った。

 その伝統を引き継いだのが、ジャニーズ事務所だった。森さんとジャニーズ事務所は深いきずなで結ばれている。森さんは東山紀之、滝沢秀明らと共演しており、森さんの「放浪記」2000回達成の時は近藤真彦、東山ら数多くのジャニーズのタレントが劇場に駆けつけた。葬儀にはジャニーズのタレントが次々と焼香に訪れ、総出演の趣さえあった。取材する記者たちを大事にした森さんだが、その「伝統」は今はジャニーズに引き継がれている。

 そして、森さん関連の記事が掲載される日は、ジャニーズ事務所側も同社タレントの記事掲載を自粛するのが慣例だった。例えば、森さんの「放浪記」の記事と、ジャニーズ関連の記事が同じ日に掲載されることはなかった。しかし、今月15日付の各スポーツ紙は、森さんから継承した仲間由紀恵の「放浪記」初日を大きく報じたが、それと同じくらいの大きさで近藤真彦の新曲発売の記事も掲載されていた。森さんの時にはありえないことだった。これも「放浪記」が新たな歴史を刻み始めた証しなのだろう。【林尚之】