高畑淳子の謝罪会見を見て、かつて息子の不祥事で会見した三田佳子のことを思い出した。

 三田は会見での対応をあやまり、世論の批判を浴びて、親の責任として芸能活動を10カ月も謹慎する事態に追い込まれた。NHK大河ドラマに主演し、CMにも何本も出演する人気女優だったが、これをきっかけにそれまでの輝きに陰りが見えるようになった。

 高畑は遅咲きの女優で、人気者になったのはここ10年ほどのことだった。9月28日からは尊敬する森光子さんから継承した主演舞台「雪まろげ」が始まるなど、大女優への道を歩み始めたばかりだった。今回の息子の不祥事は、被害者がいるという点からも罪はより重く、その歩みに大きな障害になるだろう。高畑も当初は「私が出ていいのでしょうか」と舞台降板の意志もみせたが、関係者に「1万人がチケットを買って、舞台を楽しみにしている」と説得されている。

 高畑は三田の時のように舞台を終えた後に謹慎ということを考えているようだが、例え謹慎をしなくとも、仕事は確実に減っていくだろう。

 女優として大きな転機となる60歳前後で、どんな演技を見せるかが、その後の女優人生を左右する。30年前、高畑が出演した舞台「セイムタイム ネクストイヤー」を見て以来、彼女には注目していた。その後もほとんどの舞台を見ていたから、ブレークするのは遅すぎると思っていた。

 静かにこのままフェイドアウトしてしまうのか。それとも逆境を乗り越えて、大きな女優となるのか。「雪まろげ」は何げなくついた小さなウソが騒動を招く喜劇作品で、こんな状況の中で喜劇を演じるというのは酷かもしれない。しかし、そこで踏みとどまって、見る人を楽しませることができるのか。高畑の女優力が試される場でもある。【林尚之】