◆チャッピー(米)

 ハリウッド発が当たり前のSF映画に南ア流の味付けが異彩を放っていた。エイリアン移民と人類の共存を描いた09年「第9地区」はアパルトヘイト問題を反映した異色作だった。

 そのニール・ブロムカンプ監督が人工知能(AI)を題材に選んだ。ビル・ゲイツも「人工知能を恐れている」と公言する恐怖が、愛らしいキャラクターとして造形されている。

 近未来、兵器産業の開発者がいたずら心でAIを搭載したスクラップ寸前のロボットがストリートギャングに拉致されてしまう。チャッピーと名付けられ、犯罪に利用されるが、その純な「心」はすさんだギャングも癒やしていく。怖いのはAIよりは人間だ。

 南アの人気俳優シャールト・コプリーが指先まで細かく演じ、CGで反映させたチャッピーの動きは生きている。幼児のようにはしゃぎ、はにかむ。幼いわが子や愛犬に重ねて見てしまう人も少なくないだろう。

 AIを恐れる兵器産業の幹部にヒュー・ジャックマンとシガニー・ウィーバー。ハリウッドSFのヒーローの配役が面白い。ギャング役の地元ラップ歌手、ニンジャとヨーランディは南ア社会の屈折を体現する。【相原斎】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)