81年に「の・ようなもの」で映画監督デビューした故森田芳光監督は生前、「続編は絶対に撮れない」と話していたという。それから35年後、自分を慕う映画人たちが、自分に代わって不可能を可能にしたと知ったら、どう思うだろう。

 というわけで、東京・下町を舞台に、落語家たちの青春を描いた前作の続編。公開年ときっちり同じ35年後の落語界を描いた。脱サラして落語家になった志ん田(松山ケンイチ)は、引退した志ん魚(伊藤克信)を探し出し、高座に復帰させるよう師匠(尾藤イサオ)に命じられる。熱心に口説こうとする志ん田と、普通のオッサンになった志ん魚の共同生活に、妙な味がある。高座に上がる決意をした志ん魚が、部屋で黙々と感覚を取り戻す稽古をする姿は、何とも哀愁をそそる。

 前作や森田作品へのオマージュが盛り込まれ、森田ファン必見の作品。前作を見てから今作を見ると、志ん魚への感情移入具合がハンパじゃない。逆に、今作後に前作を見た人に聞くと、仕事にも師匠の娘(北川景子)との恋にも、もどかしい松山がたまらなくいとおしいという。楽しみ方は、皆さん次第です。【森本隆】

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