ロンドンブーツ1号2号の田村淳に、日刊スポーツの各分野の記者が取材する連載「ロンブー淳の崖っぷちタイトロープ」。今回はあらためて「ボランティア」についての考え方を聞きました。


 東日本大震災があった時、何かしら一歩を踏み出して行動することは、誰にでもできたと思います。何もしないという事も選択の1つだから、動かなかった人に何も言ったりはしない。でも、動きたいなって思った人は、あの時もっと動いてもよかったかなと思うんです。


 ボクは、「衝動に駆られたら動いてみる。すぐ行動に起こすというのが大切。」というのを、あの時に学びました。まず動く、とにかく動く、行動が過ぎると時には警察の方に怒られちゃうこともあるんですけど…。


 でも、実際に動いて怒られるからこそ、身を持って分かるんです。動いてない人は“ここまで踏み込んだらダメだ”っていうエリアを頭の中で考えてしまい、すごく手前でブレーキ踏んでしまっている…強めの自主規制です。


 震災の時の、電池とカイロと懐中電灯を集めるよう公園で呼びかけたことや、路上生配信で警察の方に怒られるのとかとか...いろんな経験を経て失敗するから、ブレーキとアクセルの感じが身につく。だからギリギリまで行ける…ボクはまたどこかで、アクセル踏みすぎて怒られたいと常に思っています(笑い)。


 東日本の震災直後すぐに行動した横浜在住の「とっち」というあだ名の青年と知り合いました。仙台で出会ったんですけど、津波が起きて次の日に会社を辞めて東北に行っているんですよ。すげえやつがいるなぁと思いました。27歳くらいの若者ですよ。ガソリンがなくなったらそこに車を置いて、積んできた自転車で被災地に向かったっていう。「絶対に人手が足りなくなるはずだから」っていう思いで行ったらしいんです。その行動力に衝撃を受けました。


 そのとっちを受け入れたのが仙台のイタメシ屋の店長サボイさんって人で、ずっと被災地で炊き出しを続けていた人でした。その後、東北でお見合い企画やインディアカっていう羽根突きスポーツの大会も一緒に手伝ってくれた人です。淳の休日というプライベート企画をやるって言ったら、サボイさんは「料理を振る舞います」って、すぐ来てくれたりして。行動起こすと人とつながれるんです。

石巻で即席オーケストラをやったとき、大友康平さんがフォルテシモを歌いに来てくれた(2012年3月31日)
石巻で即席オーケストラをやったとき、大友康平さんがフォルテシモを歌いに来てくれた(2012年3月31日)

 震災から1年ぐらいたって、バラエティーのような企画も受け入れられそうな雰囲気になったので、即席オーケストラという企画をやりました。ツイッターで楽器が演奏できる人を東京と仙台で募集して、東京組はバスで移動して仙台ホールを貸し切って、はじめて会った人同士でオーケストラをやる企画です。アンパンマンのテーマやハウンドドッグの「ff」を演奏しようと企画しました。そうしたら、それを知った大友康平さんが歌いに来てくれて、会場に集まったみんなと大合唱しました。

 その会場に「とっち」も来ていたので、「震災の時に東北の危機を知って、会社を辞めて駆けつけたヤツがいたんだよ」って紹介したんです。会場に集まったみんなは「東北のために本当にありがとう」って泣いていて…でも自然と笑顔がこぼれだすという、今まで味わった事のない不思議なあたたかい空気に包み込まれました。これも人とのつながりです。


 ボランティアって言っても、ボクは結局、自分が興味持ったことしかやってないんですよ。だから、別に売名でもないし、いい人だと思われようとやっているんじゃない。自分の好奇心です。偽善なのかもしれません。でも行動するタイプの偽善です。


 ポリオワクチンの運動も興味を持ったからやりました。ペットボトルのキャップを集めることで、ポリオワクチンにつながる活動。ボクのところにキャップが山積みになった映像を見ることで、ポリオを知る人が増えれば良いなと思いました。

 キャップを託したエコキャップ推進協会が、お金の使い道に問題があるとかになって…結局、お金が集まるところって、いろんな利権も絡んでいるのだなって感じました。寄付したものが、実はストレートに本当に求めているところに流れてない場合もあるのかと非常に驚きました。

ポリオワクチンのためにペットボトルのキャップを集めた(写真は本人提供)
ポリオワクチンのためにペットボトルのキャップを集めた(写真は本人提供)

 ポリオワクチンの話は、もともとはマイクロソフトのビル・ゲイツさんから「ポリオをもう少しで撲滅できるから、淳、頼むわ!」みたいなVTRが送られてきて、国の省庁とも一緒になってやったんですよ。でも、役所は1年しかやらなかった。2年目もやるんだと思ってたら、今年はやらないって言う。「なんだよ、それこそ偽善じゃねえか」って思いましたね…ボクは辞めたくなかったので、毎年の恒例行事をして、年々集まるキャップの数が増えていってたのに、協会のお金のトラブルが起きて今は中断しています。でもいつか信頼できる団体が見つかればまた行動したいです。


 ほかに今、興味があることのひとつは、保育。

 小阪由佳っていう少し前にぶっとんだアイドルがいて、グラビアアイドルの子なんですけど、今は保育の現場で働いているんですよ。それがきっかけで興味を持っていくつかの保育所、保育園に取材したんですが…国は「1億総活躍」を掲げて女性の社会進出を促すわりには、子どもを預ける場所があまりにも整ってないので、お母さんは大変ですよね…。仕事がせっかくうまくいっていても、子どもができたら、当然預けないと仕事できない。でも預ける場所がない...。こんなんじゃ安心して出産、子育てできやしないなと感じました。


 そのあたりのことはもっと取材して知りたいし、「淳の休日」で保育の技術を持っている人と預けたい人が、いい形でお見合いできないかなとも思ってます。動いて失敗するかもしれないけれど、失敗には次の行動を起こすヒントが眠ってるので、率先して失敗したいですね。

 「マスクdeお見合い」の企画も、出会いのきっかけを作れたら、という思いでやっています(写真は本人提供)
 「マスクdeお見合い」の企画も、出会いのきっかけを作れたら、という思いでやっています(写真は本人提供)

 子どもが生まれないと、日本のこの先、やばいですよね。淳の休日で、カップルを作る企画をやっているのも、とにかくきっかけを作れたらと思っているから。カップルができて、結婚して子どもができたという時に、今度は子どもをどう育てるの?となる。保育革命みたいのがあるといいんですけどね…。


 いろいろ話したけど、ボランティアって行動を起こした人達の総称だなと感じてます。まずは行動するそれがボランティアにそして人との出会いにつながるんだと思います。


 ※連載「ロンブー淳の崖っぷちタイトロープ」は、日刊スポーツの各分野の記者がさまざまなテーマで取材し、率直に話して貰う企画です。今回は「ボランティア」について、社会担当の清水優が取材しました。

 (ニッカンスポーツ・コム連載「ロンブー淳の崖っぷちタイトロープ」)