最終回14・7%、全50話平均16・6%の高視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で放送を終えたNHK大河ドラマ「真田丸」での、主人公真田信繁(堺雅人)のせりふです。勝った人、夢がかなった人がよく口にする言葉ですが、負けた側の信繁が誰よりもこの言葉を胸に刻んでいたことに、意味と重さを感じました。

 あの手この手でしぶとく生き残る真田家のDNA。特に大坂の陣以降は、どこまで望みを捨てないのかと、こちらが根負けしそうなほどでした。必勝策が、世間知らずな豊臣上層部にことごとくつぶされる展開。どれだけ忠誠を尽くしても信用されず、頼んだことは果たされず、任せてみれば失敗ばかりされる。それでも「望みを捨てない者にのみ、道は開ける」と仲間を鼓舞し、今ある駒で何度でも策を練り直します。ついに駒が自分1人になっても、最後までベストを探って戦っていました。

 以前、三谷幸喜氏を取材した時、「僕は理系」と話してくれたのですが、やはり信繁と重なります。ひとつの答えにたどり着くにはいろいろな解き方があり、この考え方がダメなら別解でとく。何度でも別解を試み、必ず答えにたどり着いてみせるのが理系の発想で、「命にかえても豊臣家を守る」「この戦、必ず勝つ」は、決してハッタリではなかったと思えるのです。

 そして結局、戦には勝てなかった。これだけ望みを捨てず、あきらめずに戦っても報われるとは限らないところに世の中のリアルがあって、勝者の教訓より、勇気となって胸に染みました。

 名場面満載の最終回でしたが、マイベストは、首をとりにきた敵兵を、ボロボロの信繁が仕留めるラストの一幕。相手の前にひざをつき、頭を下げて降参したと油断させ、手に隠し持った武器で一気に突く。これって、父、昌幸直伝のあの戦法ですよね。「どう生きたか」の集大成で、お父さんから受け継いだ最後の一手が自然に出てくる。スマートとはほど遠い、かっこいい完全燃焼でした。

 というか、全体を振り返れば、一番しぶとかったのは、どこでも生きていける女、きり(長沢まさみさん)でしたけど。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)