樹木希林(72)がこのほど、日刊スポーツの単独インタビューに応じた。5月30日に公開された主演映画「あん」(河瀬直美監督)が世界3大映画祭の1つ、フランス・カンヌ映画祭のある視点部門に出品された。72歳で同映画祭に初参加した思いから、老いてますますさかんな女優業の今後まで存分に語った。

 樹木は昨年12月の「あん」製作報告会見で、河瀬監督から「“遺作”ということで(関係者が)やりたいんじゃないか」と言われた、と苦笑した。その5カ月後の先月、カンヌのレッドカーペットに初めて立っていた。

 「カンヌ中毒になる人の気持ちが分かった。街中、映画…すばらしいよね。朝、ホテルの外でコーヒーを飲んでいたら、男の人が2人来て、昨日、上映を見た。(『あん』を)買います、って言うの。ベルギーとオランダの人だって。世界のバイヤーがいるところって、なかなかないですよね」

 一昨年春に医師から「全身がん」の宣告を受けて以降、「がんに生かされている」という考え方で自分の体と向き合い、仕事と私生活をマイペースで両立。昨年6月に治療は一段落した。昨年12月の会見以降「あん」の宣伝活動を続け、今月6日も大阪を中心に関西のキャンペーンに参加。その中で(1)1日の取材数を制限(2)その代わり全ての取材に最低1時間は応じ、きちんと向き合って取材してもらう、と線引きをしていた。

 「五十何年、女優をやってるんだけどね。こういう風になりたいとか思わなかった。具合が悪くなってテレビがやれなくなって、映画に来させてもらった感じ。もう、やりたいこととか何もない。だって…ずっと“死ぬ死ぬサギ”やってるんだから(苦笑)私だって、今回そのつもりでやってないのに『これが最後の作品』って宣伝されたわけで…そうなんですかと」

 “遺作”が公開された先のレールは敷かれている。

 「来年に向けて(表に)出る映画は、もう撮っちゃった。(この作品を)やりたいというより、やりたくないのをやらないだけ。選び方がいいかげんというか、楽な方を選んできたのよ。女優になったのは行きがかり上。(ここまで)にぎやかしで来ているのよ。(企画は)まだ台本になる前の紙1枚で送られてくる。(今後は)まぁ体が続けば…ね。私の人生、上出来じゃないの? 畳の上で死ねそうだもの」

 「あん」を見て「がんは治る」と希望を持つ人が増えているという。「あるがままに生きる」という樹木の生き方はスクリーンを通し、人々に生きるヒントを与えている。【村上幸将】

 ◆「あん」 刑務所暮らしの末、どら焼き屋「どら春」の雇われ店長になった千太郎(永瀬正敏)は、求人を見た徳江(樹木)が高齢だからと就職の申し出を断ったが、徳江の粒あんがおいしく雇った。店は行列が出来る人気店になったが、徳江がハンセン病患者だとうわさが流れ客足が途絶えた。状況を察し徳江が店を去ると、千太郎は常連の中学生ワカナ(内田伽羅)と探し始め、ハンセン病療養所の喫茶店で徳江の親友・佳子(市原悦子)と出会う。