俳優の仲代達矢(82)の、2015年度文化勲章受賞が決まった。

 「一番喜んでいるのは亡き妻、宮崎恭子だと思います」。妻が愛用した椅子を自らの脇に据えて、東京都世田谷区の「無名塾」で会見に臨んだ。

 1975年、脚本家・演出家だった宮崎さんと無名塾を立ち上げた。二人三脚で俳優を育て、役所広司さん、若村麻由美さんらを輩出。岐路に立ったのは96年、妻が他界したときだ。「俳優をやめるか、無名塾をやめるか」。悩んだがどちらも両立させてきた。

 「大事に見守ってくれる無名塾の若者、スタッフ、全国の演劇鑑賞団体のおかげで続けられた。喜びを分かち合いたい」

 52年に俳優座養成所に入った。演出家千田是也さんから厳しい指導を受け、シェークスピア作品などで好演。小林正樹、黒沢明両監督ら巨匠に求められ「切腹」「影武者」などの映画に出演、テレビドラマでも重厚感のある演技が評価された。

 俳優を続けて60年余り。「反戦映画を撮るんだ」と映画「乱」に臨んだ黒沢監督の言葉を胸に、自身も戦争体験者としての使命を感じている。「大反戦劇をつくって死んでいきたいですね」