大ヒット曲「上を向いて歩こう」の作詞、放送作家、ラジオパーソナリティーや、ベストセラー「大往生」でも知られる永六輔(えい・ろくすけ)さん(本名・永孝雄=えい・たかお)が7日に肺炎で死去したことが11日、分かった。83歳。この日、永さんの実家、東京・浅草の最尊寺で、家族葬が営まれた。喪主は長女永千絵(ちえ)さん(57)。8月にも、お別れの会を開く。放送作家としてテレビの黎明(れいめい)期に貢献、「上を-」は、困難に立ち向かう日本人のメンタリティーを支え続けている。

 永さんは、エッセイストで長女の千絵さん、フリーアナウンサーの次女永麻理さん(54)らが見守る中、自宅で息を引き取った。ひつぎには、手紙や、以前麻理さんがプレゼントして喜んでくれた米歌手ナタリー・コールのカセットテープなどが納められた。

 11日に葬儀を終えた麻理さんは、6月27日に終了したTBSラジオ「六輔七転八倒九十分」を引き継いだ「いち・にの三太郎~赤坂月曜宵の口」に出演、終了後に同局で会見した。

 永さんは亡くなる前日はベッドの上に座って、アイスキャンデーやあたりめをなめて「おいしいね」と話すほど元気だったという。最期の様子について、麻理さんは「ふーっと息が遠くなって『お先に失礼』というような感じでした。足早に立ち去っていくかのようで、父らしかった」と話した。死因は肺炎だが、医師が「老衰と言ってもいい」と言うほど穏やかだった。

 02年に亡くなった妻昌子さんとはおしどり夫婦で知られた。麻理さんは「七夕の日に母に会いに行ったのかな。今ごろ、中村八大さん、坂本九さん、渥美清さんにも会っているのでは」。

 数年前からパーキンソン病と前立腺がんを患い、大腿(だいたい)骨骨折もあり、車いすで生活する日々になった。今年1月末には背中の圧迫骨折の手術で入院したが、ラジオへの思いは最後まで熱かった。4月19日に退院し、「六輔-」最終回までにはリスナーにあいさつをしたいと、自宅療養、リハビリを続けていた。麻理さんは「生涯現役でした。見事に人生を生ききった」と父をたたえた。

 ◆永六輔(えい・ろくすけ)1933年(昭8)4月10日、東京・浅草生まれ。早大文学部中退。中学生の時、NHKラジオ「日曜娯楽版」に脚本を投稿し、大学時代から本格的に放送作家に。ラジオパーソナリティー、作詞家、文筆家などさまざまな顔を持つ。尺貫法復権運動でも知られる。長女はエッセイスト永千絵さん、次女は元フジテレビアナウンサー永麻理さん、孫は俳優育乃介。