「竜じい」の愛称で親しまれた吉本新喜劇のベテラン俳優、井上竜夫さん(本名・井上龍男=いのうえ・たつお)が5日午前4時20分、高度肺気腫のため、兵庫県西宮市内の病院で亡くなった。74歳だった。葬儀・告別式は、家族の強い意向で密葬として7日に終えられ、この日、所属の吉本興業が発表した。

 親族によると、亡くなる前日には、病室で家族全員がテレビを見ながら談笑。「また明日」と別れた後の深夜に容体が急変したという。

 井上さんは14年9月25日、なんばグランド花月に出演中に体調不良を訴え、休養。若い頃に結核を患った影響から、呼吸器系に持病があり、休養は長引いた。同年末の吉本新喜劇感謝祭も欠席したが、昨年12月の同感謝祭には出演。久々にファンの前に姿を見せた「竜じい」には、客席から大きな拍手が送られ、当初予定の出演時間より、長めに舞台に立っていた。

 ただ、その後も舞台復帰はかなわず、これが最後の公の場になった。

 井上さんは高校時代から演劇部で活動し、松竹新喜劇の曾我廼家五郎八に師事したのを経て、63年に吉本新喜劇入り。伸び悩んだ時期もあったが、89年の「新喜劇やめよッカナ?キャンペーン」を乗り越え、老け役の「竜じい」が定着。和服姿で足元がおぼつかないおじいちゃん役にふんし、「おじゃましまんにゃ~わ」のあいさつギャグなどで人気を博した。