売れた先に、地上波のテレビ各局の番組に出演…というのが目標だった時代から、今は芸人が自らインターネット上に番組を持ち、発信する時代となった。佐久間も、自身が感じた時代の変化への思いを「ふでばこ君」に込めた。ふでばこ君は、空から地上へ文房具を放り投げる文房軍と戦うが、文房軍のメンバー「パソコン君」との戦いにこそ、佐久間の時代への思いが投影されている。

 「文明が栄えすぎた今、アナログが人気になって…振れ幅が今後、どうなるんだろうと思ったりします。『ふでばこ君』も手書きで描いたものをスキャンして作りましたが、いいところをとって、うまく折り合いをつけられないのかなと」

 初の絵本を出し、今年は人生で初めて海外に行こうと考えている。この先、佐久間はどこへ向かうのか。

「3期後輩の又吉(直樹)は前から『佐久間さんのネタが、とんでもなく、すごいのは分かっていますから違うアプローチ、チャンネルはないですかね? 自分は小説も出して(違う)表現ができる形があるんですよ』と言ってくれました。何かを作ることに特化したことが、本という違う形で出たことが、ありがたい。面白いことを提供する意味では、自分が演じるか本になるかという違いはあるけれど同じこと。(出版は)今後も機会があれば…基本的にはネタを作っていくことがメインですが」

 佐久間の笑いは、他者を攻撃しない。ネタを披露している最中も、笑みを浮かべ、観客に「ついてこ~い」と呼び掛ける。表現者として格闘の末、生み出しながら、佐久間のネタは寄り添い、包み込むような優しさがある。絵本からもにじみ出る、その優しさこそ、佐久間一行の生き方、人生そのものだ。【村上幸将】