11月に83歳で亡くなった俳優高倉健さんが、自身の戦後と映画人生を振り返った内容の原稿を死の4日前に完成させていたことが9日分かった。「最期の手記」として、10日発売の月刊誌「文芸春秋」新年号に掲載される。

 手記は「往く道は精進にして、忍びて終わり、悔いなし」という比叡山「大阿闍梨(あじゃり)」の故酒井雄哉さんから贈られた言葉で終わっており、死を前にした静かな心境が伝わってくる。

 高倉プロモーションなどによると、高倉さんは同誌の戦後70年企画の依頼に応じ、原稿が完成したのは東京都内の病院に入院中の11月6日。原稿が同誌編集部に送られてきたのは死の当日の同10日で、最後の仕事になった。

 手記は原稿用紙16枚分。終戦を迎えて「人生が変わる一瞬。諸行無常」を、初めて味わった経験から始まり、これまであまり語らなかった映画現場での苦労話なども書かれている。

 「網走番外地」シリーズなどがヒットし、異常な忙しさで精神的にも肉体的にも限界だった高倉さんが、撮影所を抜け出した「数十日間の孤独なストライキ」や、「自分を変えた一本」である「八甲田山」の故森谷司郎監督との熱い交流などの秘話もある。

 「往く道は-」の言葉は、「南極物語」の出演を迷っていたときに酒井さんから受けた言葉という。「僕に一つの道を示し続けて下さっている」。手記は、こう締めくくられている。