落語家林家いっ平(37)が来年3月の2代目林家三平襲名前の1月に父である初代林家三平役で座長公演を行うことが22日、分かった。東京・銀座の博品館劇場公演「すいとんメモリーズ」(1月6~18日)で、襲名より一足早く「三平」になりきる。

 ある新聞に掲載されたいっ平の「思いでの食」のインタビュー記事がきっかけだった。1945年3月10日の東京大空襲で両親、兄弟ら家族6人を亡くしたいっ平の母海老名香葉子さん(74)はその日になると、大鍋いっぱいにすいとんを作り、家族、家に出入りする弟子や知人に振る舞う。

 いっ平は「当時、唯一体を温めてくれるごちそうだったそうです。戦争を忘れないでほしいという母の切なる願いとぬくもりが、すいとんには詰まっているんです」と話した。記事に感動した舞台プロデューサーが舞台化を持ち掛け、実現した。

 戦災孤児から人気落語家のカミさんへと明るく生きた香葉子さんの半生記で、襲名を控えた次男いっ平が父三平役にふんし、香葉子さん役には山田まりやが決まった。香葉子さんの父親代わりとなった3代目三遊亭金馬に渡辺正行、4代目柳家小さんの妻に演出も兼ねるわかぎゑふのほか、伊東四朗の次男伊東孝明、北島三郎の三女水町レイコ、5代目小さんの孫の小林十市といった2世タレントが脇を固める。

 いっ平は西郷輝彦主演「江戸を斬る」などで舞台経験はあるが現代劇は初めて。「僕が主役でいいのか。しかも現代劇でちょっと迷いました」というが、今は舞台初主演に意欲を燃やす。「父三平の価値観、生い立ちを再認識するいい機会。襲名前で大変だけど、これを乗り越えて自分も大きくなれると思います」。スチール撮りでは三平ヘアに「そっくり」と評判だが「似ているみたいですね。父のDNAがあるということだと思うけど、それをきちっと開花させないといけない。死に物狂いでやります」。1月23~25日は大阪厚生年金会館で上演される。