未公開株の購入話を知人男性に持ちかけ、3億7000万円をだまし取ったなどとして、詐欺と恐喝未遂罪に問われたタレント羽賀研二被告(47)に対し、大阪地裁は28日、無罪の判決を言い渡した。法廷でむせび泣いた羽賀被告は判決後、タレント活動について「これからひとつひとつ積み重ねていきたい」と決意を語った。恐喝未遂の共犯とされた元プロボクシング世界王者渡辺二郎被告(53)にも無罪の判決が言い渡された。

 判決の瞬間、羽賀被告は強く握りしめた拳を口元へ運んだ。「両名とも無罪」。中川博之裁判長の言葉を聞くと、傍聴席を振り返り「うっ」。小さくガッツポーズし、顔をくしゃくしゃにして、何度もしゃくりあげた。感極まったのか、床に崩れ込むように傍聴席側へ歩き出すと、裁判長から証言台の前に戻るように注意された。

 逮捕から約1年5カ月。この日は白いシャツに黒のストライプスーツ、黒いブーツ姿。緊張した表情で入廷し、傍聴席と裁判官席に深々と頭を下げた。閉廷後、傍聴席にいた妻麻由さんと抱き合い、泣きじゃくった。

 検察側の求刑は懲役8年。この日の無罪判決に傍聴席は一瞬、ざわめいた。閉廷後、大阪地裁からタクシーに乗り込む直前、無罪判決を受けた瞬間の心境を報道陣に聞かれると「びっくりしました」と話した。

 羽賀被告は一貫して無罪を主張。公判では何度も涙を流し「潔白」を訴えた。判決理由は羽賀被告側の主張を認め、「被害者の証言に全幅の信頼を置くには合理的な疑いが残る」と指摘。恐喝未遂については「前提となる詐欺が認められず、共謀もなかった」とした。

 今年5月にいったん結審したが、7月の判決直前に羽賀被告側が申請した証人尋問が認められて再開。出廷した羽賀被告の知人の歯科医師が「被害者は株の元の価格を知っていた」と証言し、9月に再び結審した。無罪判決はこの証言を重視した結論になった。

 弁護士を通じて出した自筆のA4用紙2枚の書面には「仕事、信用、人間関係、すべてを失った」とつづった。帰京した品川駅では「毎日が地獄の日々だった」と振り返った。今後のタレント活動について「ゼロではなくマイナスからのスタート。これからひとつひとつ積み上げていきたい」と復活を誓い、近く会見を開くという。

 一方で清水治・大阪地検次席検事は「恐喝未遂の共犯者2人は、既に有罪判決を受けていることから、今回は予想外の判決であり、判決文を精査して、対応を検討したい」としている。