お笑いタレント、スマイリーキクチ(37)のブログに、本人が過去の殺人事件の犯人であるかのような中傷や脅迫文が数百件書き込まれる事件があり、警視庁中野署は5日までに、17~45歳の男女計18人を名誉棄損の疑いで書類送検する方針を決めた。また、脅迫容疑で川崎市の会社員の女(29)を書類送検した。キクチによると、中傷は約10年間続いたといい、「事実無根」と完全否定。ネット上で相次ぐ、こうした「炎上」と呼ばれる集団書き込みに対する一斉摘発は、全国初とみられる。

 調べでは、札幌市の女子高生(17)や千葉県松戸市の会社員の男(35)大阪府高槻市の男(45)ら計18人は、昨年1月から4月にかけ、89年に東京都足立区で起きた女子高生コンクリート詰め殺人事件にキクチが関与したかのような事実無根の内容をブログのコメント欄に書き込み、名誉を棄損した疑い。また会社員の女は昨年12月、「殺してやる」などとキクチを脅す内容の書き込みをした疑い。

 キクチは昨年1月、公式ブログを開設。中野署によると、昨年1月以降の悪質な書き込みは「人殺しがなんで芸人をやってるんだ」「死ね」「犯人のくせに」などの内容で数百件に上り、数十人がかかわったとみられている。キクチ側は、ブログの書き込み制限をするはめになり、同署に被害届を出した。同署は、アクセス記録の解析などから、特に悪質な書き込みをした人物を特定して立件に踏み切ることにした。

 キクチが中傷のターゲットになったのは、足立区出身であることや、犯人グループと年齢が近いことや、「元不良」というウワサがいつの間にか流れたことから、事件と結び付けられたとみられる。ただ所属事務所では「『足立区出身の元不良』という売り出し方は一切したことがない。(中傷が始まった発端は)分からない」としている。

 キクチは5日、この件でコメントを出した。それによると、同殺人事件に関与したかのようにネットなどで中傷される被害は、約10年前から続いており、主に「キクチは過去に起きた刑事事件の犯人である」「その事件の犯人と知り合いである」「事件にかかわっていた」「事件のことをお笑いのネタにした」「被害者の名誉を傷つける発言をした」という内容という。

 キクチは「これらは全くの事実無根です。私自身の生命の危機を感じる、殺害予告とも受け取れる内容にまでエスカレートしてしまいました。これまで公式ホームページやブログでも、否定してきました。しかし、悪意のある書き込みはなくなりませんでした」とコメントした。

 こういった、ブログなどへの集団的な中傷書き込みによる「炎上」被害は相次いでいる。警察庁によると「炎上」をめぐって、書き込みした人が集団で立件されたケースは「聞いたことがない」といい、全国初とみられる。

 [2009年2月6日8時30分

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