俳優集団、D-BOYSのメンバーで、交通事故の後遺症による高次脳機能障害を負った俳優柳浩太郎(24)が、告白本「障害役者~走れなくても、セリフを忘れても~」(ワニブックス、7月4日発売)を出版することが11日、明らかになった。「終わったな。死のう」というどん底から舞台復帰を果たすまでの苦悩の日々を明かし、“障害(生涯)役者”を宣言している。

 自伝は「ボクは、この日障害者になった」というショッキングな書き出しで始まる。03年、ミュージカル「テニスの王子様」で主演デビューという栄光から8カ月後、交通事故に遭い、すべてが暗転する。一時は脳死による植物状態も危ぶまれた重傷で、外傷性くも膜下出血による右半身まひ、記憶障害、高次脳機能障害などの後遺症を負った。

 ダンサーであったにもかかわらず、体が動かない絶望で「もう終わったな。死のう」。病室の窓から飛び降りることも考えたという。再起のきっかけは「テニス―」の共演者たちから届いたビデオレターだった。「戻ってこい」という明るい声の数々に奮起し、壮絶なリハビリの末、再び舞台に立つまでが描かれる。

 今も高次脳機能障害を抱えている。感情を抑えられず怒り出したり、作業を指示されたそばから間違えるなどが主な症状。今もまっすぐ歩くことが困難で、セリフを覚えるのに時間がかかり、ろれつも回りにくい。俳優として大きなハンディを抱えるが、人の温かさを知り、デビュー当時より「今の自分の方がいい」ともつづっている。

 出版元のワニブックスは「心が折れることなく、しなることができたそのメンタルは、現代の私たちが学ぶべき人生のヒントがたくさん詰まっている」と話す。柳は「事故当時はなかなか現実を受け入れることができなかった自分でしたが、たくさんの方々の支えと6年間の紆余(うよ)曲折があり、今となっては『おれの人生って宝物だ!』って思っています」。また「頑張って生きてる皆さんに、ちょっとでも落ち込んだら、この本を読んで元気出してもらえたらうれしい」とメッセージしている。

 発売日の7月4日には、東京・渋谷シアターTSUTAYAで握手会を行う。

 [2010年6月12日7時46分

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