猫に“追試”が課せられた。カンボジア国籍を取得したタレント猫ひろし(34)が16日、インドネシアのパレンバンで、ロンドン五輪カンボジア代表選考会を兼ねた東南アジア大会男子マラソンに挑み、自己新記録の2時間37分39秒で5位に入った。しかし、同国オリンピック委員会のワット・チョムラーン事務局長は「満足できる結果ではない」と代表決定には不十分との見解。一方で同国代表コーチは「彼はカンボジア最強の選手」と評価しており、猫は来年2月26日の東京マラソンで出場権獲得に再挑戦する方向だ。

 最善を尽くした。高温多湿とケガに耐え自己ベストを10秒縮めた。だが、この日は猫の手に小判、いやロンドン行き切符は入らなかった。

 同大会には、カンボジア人選手として唯一の出場で国内1位は確保した。レース後、同国オリンピック委員会のコーチは「将来性も含めて判断すると、現在のところオリンピック代表は猫ひろしだ」と断言した。しかし、同委員会のチョムラーン事務局長が「満足できる結果ではない」と代表内定は認めなかった。

 猫にとって、最大のライバルで北京五輪にも出場したヘム・ブンティン(25)は大会を欠場した。だが、ブンティンが今年8月に出した記録、2時間31分前後のタイムが代表内定の目安となっていた。その背景もあり、チョムラーン事務局長は「2時間27~28分を期待していた」と、コメントした。猫にとってはあまりに厳しいハードルだ。

 それでも諦めるつもりはない。日本から駆けつけた整体師によると、猫の左足は「シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)」の症状があり、右足はカンボジアで痛めた「腓骨(ひこつ)筋炎」が発症しているという。腹筋にも肉離れの症状が残っており、万全の状態ではなかった。加えて、早朝5時30分スタート時でも26・4度、68%という高温多湿。その悪条件でも、今年2月の東京マラソンでマークした自己記録を10秒更新し、着実に実力をつけていることを証明してみせた。猫もレース後、「ケガもあり、暑い気候もすごかったんで、よく自己ベストを出せたと思う。31分を切れなかったのは実力なんで認めます。これにかかわらず、カンボジア選手内での1位を目指すことには変わりない」とコメントした。

 今回の記録は五輪参加標準記録Bの2時間18分0秒には遠く及ばないが、陸上は標準記録に達した種目がない国・地域は、男女1人ずつがどれかの種目に出場できる「特例」がある。同国オリンピック委員会は2月末までの国際大会で、猫がさらに自己記録を更新することを期待している。“追試”の舞台は、来年2月26日の東京マラソンが濃厚。カンボジア人の猫が、日本で夢を懸けた走りをみせる。