話題の言葉を選ぶ「2011ユーキャン新語・流行語大賞」の表彰式が1日、都内で行われ、トップテンの10語中、東日本大震災関連が半数の5語を占めた。「帰宅難民」「絆」「こだまでしょうか」「3・11」「風評被害」で、約2万人の死者・行方不明者を出した津波被害や原発事故を象徴する言葉が並んだ。年間大賞には、今夏のサッカー女子W杯で世界一に輝いた日本代表チームの愛称「なでしこジャパン」が選ばれた。

 例年は歴代首相や俳優、タレントが多数登壇し、華やかな雰囲気が漂う表彰式だが、今年は違った。五十音順で紹介されるトップテンの言葉は、最初の4つまでが震災関連。鉄道運休による「帰宅難民」、震災で再認識した多くの仲間との「絆」、テレビCM自粛で代替放送された公共広告の1つ「こだまでしょうか」、震災当日の「3・11」。帰宅難民の代表として、千葉県内の自宅に帰れなかった30歳代の女性会社員、小川裕子さんが登壇。「仕事先の東京ビッグサイトで一夜を過ごしました。まさか自分がこんな体験をするとは」と振り返った。

 選考委員の姜尚中(カン・サンジュン)東大教授は「絆は、今年1年を象徴する言葉。元気のない日本で、身の丈で生きていこうという証しを感じる」と説明。ジャーナリストの鳥越俊太郎氏は「これだけ大きい被害は、第2次世界大戦以来。5つも震災関連の言葉が入るのは当然の結果」と話した。選考会では重苦しい雰囲気が漂い、目前のショートケーキに手を付けない人が多かったという。

 司会を務めたフリーアナウンサーの生島ヒロシも宮城県気仙沼市出身で、妹夫婦を大津波で失った。受賞語「絆」を紹介した後、「国内外から集まっているボランティアに賞をささげたい」。原発事故による「風評被害」を紹介した際には、「私には畜産農家の知り合いがたくさんいる。農家の皆さんが元気になることを祈ります」とエールを送った。被災者を親族に持つ生島の言葉が、会場に重く響いた。

 「ラブ注入」で受賞し、整体師の肩書も持つお笑いタレント楽しんごも、被災地でボランティアをしていた。「(岩手の)陸前高田に整体をしにいきました。来年もたくさんラブ注入がしたい」と笑顔をみせた。「どじょう内閣」の野田佳彦首相や、「3・11」の後に記者会見を繰り返した枝野幸男経産相が受賞したが、表彰式を欠席。代理も立てなかった。【柴田寛人】

 ◆新語・流行語大賞

 1984年(昭59)に制定され、現在は審査委員会によってトップテンと年間大賞を選ぶ。世相を反映し、多くの人々の話題になった言葉が対象で、その言葉にかかわった人物や団体が表彰されてきた。候補の言葉は「現代用語の基礎知識」(自由国民社)の読者アンケートで決定。03年から「ユーキャン新語・流行語大賞」と改称。選考委員は女優室井滋、歌人俵万智氏、漫画家やくみつる氏、ジャーナリスト鳥越俊太郎氏ら。