<連載「気になリスト」(54)>

 バイオリニスト末延麻裕子(25)が、独自のスタイルでクラシック界に新風を巻き起こしている。時にしゃがみ込み、ポップスのようなアップテンポなリズムを奏でる。衣装もドレスではなく、自身のセレクトで“おしゃれ女子スタイル”を徹底している。

 そんなキャラがフジテレビ関係者の目に留まり、同局が放送するフィギュアスケートの全日本選手権、4大陸選手権(8日開幕、大阪)世界選手権(3月10日開幕、カナダ)3大会のプロモーションアーティストに選ばれた。1月27日には東京湾クルーズ船「ヴァンテアン」で、浅田真央(22)が使用する「白鳥の湖」などを現代風のアレンジで演奏し乗船客にフィギュアの魅力を伝えた。

 フィギュアとは縁があった。09年1月に東京・代々木第1体育館で開催されたアイスショー「スターズ・オン・アイス」で高橋大輔らの演技を生で見た。「皮膚の揺れ方まで計算してるんじゃないかと思うくらい豊かな表現力はすごかった」。同じように表現を追求する姿に心が動き、自身の演奏を進化させたという。

 末延は、スケーターが曲に合わせて振り付けやジャンプを決めていくように、演奏者もスケーターの動きを学ぶことで、表現方法を変えられると考えた。具体的にはバイオリンの弓を上げ下ろしする際に弓の当て方を変え、スケートの刃が氷面に引っかかるような音を出してみた。バイオリンではやらない弾き方で、新たな音を生み出した。

 4歳からバイオリンに、すべてを注いできた。幼いころはしゃべるよりバイオリンを弾き感情をぶつけた。「バイオリンのすばらしさを伝えたい」。その一心で、業界ではタブー視される刺激的な演奏やファッションに挑んだ。一方で「技術で負けない、弾けるんだという自信がある。そこで認めてほしい」と話す。

 1700年代製のバイオリン「ガリアーノ」が愛器で、「ジョゼフ君」と名付けた。「弾いた瞬間、ドキドキが止まらなくなって…恋人ですね。結婚できなくてもいいです」。“恋人”とともに、11日に大阪フィルハーモニー交響楽団、3月3日に東京フィルハーモニー交響楽団と念願の共演を果たす。

 【村上幸将】

 ◆末延麻裕子(すえのぶ・まゆこ)1987年(昭62)3月13日、山口・光市生まれ。08年にシャネルが若手音楽家を支援する「シャネル

 ピグマリオン・デイズ」参加アーティストに選ばれ、同年に桐朋学園大卒業。12年7月にロンドンで開催された「Japan

 Festival」でLUNA

 SEAのドラマー真矢と共演。書道8段。165センチ。血液型O。(2月6日付

 紙面から)