主演舞台「誓い~奇跡のシンガー」の中止問題で、歌手土屋アンナ(29)が3026万円の損害賠償を求められた民事訴訟の第1回口頭弁論が7日、東京地裁で行われた。土屋は出廷しなかったが、小林久起裁判長は土屋側に「稽古に出なかった法的根拠を明らかにしてほしい」と求めた。原告が主張する公演中止の要因となった稽古不参加が争点となる見込みで、土屋側には厳しいスタートになった。

 人気歌手が訴えられる注目の裁判だけに、東京地裁で最も大きい103号法廷で行われた。約90人が傍聴できるが、この日は報道陣を中心に半分が埋まった。原告側は舞台を主催した株式会社タクトの社長で演出家の甲斐智陽こと高橋茂氏と代理人の伊藤芳朗弁護士が出席。被告側は土屋本人は現れず、代理人の4人の弁護士が出廷した。

 口頭弁論は損害賠償額の計算間違いを指摘後、舞台の台本や原案となった浜田朝美さんの著書「日本一ヘタな歌手」などの証拠物件を提出。被告側から提出された答弁書についてやりとりがあった後、小林裁判長は土屋側に2つのことを求めた。

 土屋と原告側が今年5月8日に交わした出演契約書には、稽古についても明記されていた。このため小林裁判長は土屋側に「稽古に出ない法的な根拠を明らかにしてほしい」と求めた。土屋は、舞台の原案となったノンフィクション「日本一ヘタな歌手」の著者、浜田朝美さんが舞台化を承諾していないとして途中から稽古に出なくなった。小林裁判長は「承諾の有無は稽古に出ない理由にならない。次回弁論で法的根拠を整えて反論してもらいたい」と求めた。さらに8月の公演直前の7月18日、浜田さんが土屋に渡した手紙が稽古不参加のきっかけになったことから、手紙も証拠として提出するよう求めた。

 原告側の伊藤弁護士は「被告側の答弁書に新しい事実はなかった。稽古に出ないという債務不履行の根拠を被告側が次回までまとめるようになった点に、手ごたえを感じています」と話した。伊藤弁護士によると証拠調べなどに時間がかかるため、1年を超える長期裁判になる見込みだ。

 閉廷後、甲斐氏は「名前が売れていようが、まずは人間であれということ。言いたいことがあったら(出廷して)堂々と主張したらいい」と話した。次回口頭弁論は12月11日。