水島新司氏(74)による人気野球漫画「あぶさん」が41年の連載に幕を閉じることが19日、出版元の小学館から発表された。最終回は来年2月5日発売のビッグコミックオリジナルで、19日発売の最新号も含め、残り4回掲載される。

 「あぶさん」は1973年(昭48)に同誌で連載を開始した。酒豪の強打者景浦安武、通称「あぶさん」は南海ホークスの老スカウトに誘われてプロ入り。酒豪だけに持久力はないが、抜群の集中力を持っていると見抜いた野村克也兼任監督(当時)に代打の切り札として抜てきされたことからスタートした。以来V9を達成した巨人、阪急山田久志、ロッテ村田兆治、西武東尾修ら往年の名投手から、松坂大輔ら現役まで実在のプロ野球選手との対戦やふれあいが描かれた。終了発表に際し、水島氏は小学館を通じて「数え切れないほど多くのプロ野球選手の皆さんから応援と協力を頂きながら、この作品は育ってきたように思います」と感謝の言葉を寄せた。

 行きつけの居酒屋「大虎」でのだんらんも人気の秘密で、あぶさんの故郷新潟の日本酒「越乃寒梅」が再三紹介されるなど、酒好きの読者にも愛された。

 南海からダイエーに舞台を移してレギュラーに定着すると、45歳の91年から3年連続3冠王に輝くなど超人的活躍ぶりで、近鉄入りした長男景虎との親子対決まで描かれた。63歳まで現役を続ける荒唐無稽ぶりだったが、パ・リーグの多くの選手が「『あぶさん』に登場したら一人前」と憧れる作品だった。

 引退後は10年からソフトバンク2軍助監督、今年は1軍助監督を務めたが、4位に沈んだ責任を取って退団したところまで最新号で描かれている。小学館によると、単行本は今月末に105集が発売され、3月末の107集が最後になる。

 ◆景浦安武(かげうら・やすたけ)1946年(昭21)新潟市生まれ。リキュール「アブサン」と名前の音読みから通称「あぶさん」。阪神の主砲だった景浦、近鉄の酒豪打者永渕がモデルとの説がある。他打者より7センチほど長い約94センチ(37インチ)のバット「物干しざお」を愛用しながら、内角球を得意にして本塁打を量産した。口に含んだ酒をグリップに吹き付ける「酒しぶき」が打席入り前の儀式。妻は大虎の看板娘だったサチ子で、長男景虎は近鉄、阪神、ソフトバンクで活躍の左腕投手、長女夏子は芸能界で活躍した。

 ◆主な長寿漫画

 漫画雑誌で現在も連載中で、掲載期間が長いのは、68年11月開始の「ゴルゴ13」で、コミックは今月5日発売までで171巻。その前年からは「超人ロック」が開始も、長い休載期間があった。コミックの巻数が多いのは、76年から連載中の「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の188巻。「あぶさん」と同じビッグコミックオリジナルで連載中の「浮浪雲」も73年から継続。