沢田研二(66)が13日、全国ツアー「三年想いよ」を東京・渋谷公会堂でスタートさせた。ステージ上で「アッカンベー」をもじり、「アッカン『アベ(安倍)』~」とコメント。原発再稼働の方針を進め、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した安倍政権を批判したとみられる。

 毎夏恒例の全国ツアー初日。沢田は今年も脱原発と平和憲法護憲を訴えた。3曲を歌い終えると、帽子をそっと取った。穏やかな表情や語り口とは対照的。観客約2000人に、強烈なメッセージを発した。

 「休み癖がついて、このまま(歌手を)辞めてしまおうかなと思ったけど、危なっかしい時代だから、ちゃんと歌わないといけない。アッカン『アベ(安倍)』~」

 ファンはすぐに意味を理解して笑ったが、沢田は「でも、麻布十番の(人気居酒屋)『あべちゃん』は大好きだけどね!」と続け、会場を和ませた。

 東日本大震災以降、毎年3月11日に、被災地への祈りと脱原発への思いを込めたCDをリリースし続けている。今年も3月11日にアルバム「三年想いよ」を発表した。「復興が進まず、まだ何も変わってない部分があると聞いています。遠い場所にいると、忘れてしまいがちです。被災地のすべてに祈りを込めたアルバムです」。新アルバム収録曲を歌う前、復興を願う気持ちを言葉ににじませた。

 今では希少となった政権に物を言うアーティストだ。新アルバム収録曲とともに、脱原発を訴えた「F.A.P.P.」(12年)を披露。さらに、憲法第9条を守ろうとの思いを込め「我が窮状」(08年)を、あえて9曲目に盛り込んだ。

 ファンを楽しませる使命もしっかり果たした。「勝手にしやがれ」「危険なふたり」など大ヒット曲も次々と披露。約2時間半を完走。アンコールでは、ステージの端から端まで走った。

 「この年になって、歌うことが好きになったみたい」。照れくさそうに言うと、大きな拍手が起きた。最後まで、メッセージもパフォーマンスも力強かった。【近藤由美子】