AKB48を卒業した前田敦子(21)が日中合作映画「一九〇五(いちきゅうぜろご)」(来年秋公開)に出演することが9日、分かった。主演は香港の人気俳優トニー・レオン(50)で共演は松田翔太(27)。海外映画祭への出品作が多い黒沢清監督(57)がメガホンをとる。製作側はベネチア映画祭出品を目指しており、前田が各国映画関係者が注目するレッドカーペットを歩く可能性も十分にある。撮影は11月開始。

 本格女優を目指す前田にとって、これ以上ないビッグプロジェクトだ。「一九○五」は日中合作で、セリフにも中国語がある。主演のトニー・レオンはアジアを代表する大物俳優。00年「花様年華」でカンヌ映画祭の主演男優賞を獲得したほか、出演作が2度もベネチア映画祭で金獅子賞(最高賞)を受賞するなど世界的に注目され続けている名優だ。メガホンをとる黒沢監督も国際映画祭常連で世界的に評価が高い。これまでに「回路」「アカルイミライ」「トウキョウソナタ」でカンヌ映画祭、「叫」でベネチア映画祭に参加、国際批評家連盟賞など受賞実績もある。前田は「黒沢監督の作品に参加できることにワクワクしています。女優としての素晴らしい経験になるよう頑張ります」と話している。

 明治時代末期の1905年(明38)の横浜が舞台。高利貸の中国人(レオン)がターゲットを追って来日し、国粋主義者の男(松田)と出会うところから物語が始まる。前田は主人公が魅了されるヒロイン宮子を演じる。「自分の思い通りになると思わないで」というセリフがあり、心(しん)の強さも持っている設定だ。地味な女性から華麗に変身を遂げていく姿も見どころとなりそう。難役とも言えるが、前田は「女性のあらゆる魅力を持っている宮子を全力で演じたい」という。

 09年に香港で開催された映画祭で黒沢監督とレオンが出会い、製作準備がスタートした。篠原弘子プロデューサーは「往年の大女優が持っていたような大きさ、強さを兼ね備えた類いまれな女優」として前田を起用したという。

 共演の松田は、脚本を受け取り、「ゾクゾクしました」と作品に強い期待を寄せている。レオンは「とても興奮している。貴重な体験を楽しみたい」と話している。製作側はベネチア映画祭出品を目指す。実現すれば、各国映画関係者が注目する中、前田がレッドカーペットを踏みしめることになる。