モントリオール世界映画祭授賞式が1日(日本時間2日)、カナダで行われ、女優吉永小百合(69)初プロデュース映画「ふしぎな岬の物語」(成島出監督、10月11日公開)が審査員特別グランプリとエキュメニカル審査員賞の2冠を受賞した。吉永にとって、海外映画祭初タイトルとなる。

 フランス語で題名「CAP

 NOSTALGIE」(ケープ・ノスタルジア)が読み上げられた瞬間、吉永は歓喜の笑みを浮かべ両手で拍手した。「私が一番にキャーと言ってしまって、ちょっと恥ずかしかったんですけど最高の気分でしたね」。共演の阿部寛(50)も「吉永さんが第一声を上げてくださって、取ったんだと実感が湧いた」と振り返った。

 審査員特別グランプリは、最高賞グランプリに次ぐ賞で日本映画の受賞は11年「わが母の記」以来3年ぶり5度目。吉永は金色のトロフィーを手に、出品が決まった7月から特訓したフランス語でスピーチ。「いただけると思っていなかったので(直前に)全然練習してなかった。だから(スピーチを)書いた紙を慌てて取り出して」と笑った。

 映画デビュー55年、118本目で初の国際タイトルをつかんだ。最高賞を争うコンペティション部門への挑戦は、世界3大映画祭の1つベルリン映画祭に出品された93年「夢の女」08年「母べえ」以来。3大映画祭に次ぐ舞台での三度目の正直に「海外に出ては、本当に初めて」と喜んだ。「緊張の毎日で授賞式の前に帰ってしまえば、こんなに胃が痛くなったり心臓がバクバクすることはなかったのにと思いながら、いい瞬間を迎えられた」。初めてプロデューサーを務めた重圧も喜びに変わった。

 キリスト教の宗派を超えた審査員が、人間の内面を豊かに描いた作品に贈るエキュメニカル審査員賞受賞もうれしかった。吉永演じる主人公が店主の、岬カフェでの交流を描いた物語が「一生懸命生きる気持ちにさせられる」と評価された。原爆詩の朗読をライフワークにするなど、世界平和を訴え続けただけに「世界共通に人と人とが手を取り合い生きていく大切さが通じたと思うとうれしい」と感激した。

 吉永は今日3日にも帰国の予定。「日本の手作りの映画が少なくなってきていると思う。心と心をつなぐ映画を受け止めていただきたい」と思いを語った。