プロ野球広島カープが9月10日の巨人戦(東京ドーム)で25年ぶりのリーグ優勝を果たすと、広島の街は真っ赤に染まった。カープフィーバーは社会現象となり、今年の世相を映した言葉を選ぶ「ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞は、カープの快進撃から生まれた「神ってる」が選ばれた。リーグ優勝から3カ月、広島の街はいまも祝福ムードが漂う。

 長かった。91年以来、四半世紀ぶりのリーグ優勝に広島の街が一体となり、喜びを爆発させた。9月10日夜、繁華街は赤いユニホーム姿のファンで埋め尽くされた。「それ行けカープ」の大合唱。タキシード姿の新郎も胴上げされ、道行く人同士がハイタッチを繰り返した。

 「もう1度、あの感動を味わいたくて」。広島県三原市の主婦深見彩香さん(31)はカープファンの仲間とイオンモール広島府中店で開催中のイベント「カープV7体感パラダイス 熱狂の瞬間展」を訪れた。展示ブースの一角に3方向を縦3メートル、横6メートルの大型スクリーンで囲んだ部屋を設置。緒方監督がファンへ「おめでとうございます!」と叫ぶと、選手らがビールをかけ合う映像と音が約3分間、流れる。深見さんはあのときの感動を思い出しながら「ビールかけ」を“体験”した。

 会場には他にも、だまし絵で緒方監督を胴上げしているような写真が撮れるコーナーや、新井選手の2000安打達成時の記念の花輪など、お宝グッズも展示されている。イベントは25日に終了する予定だったが、ファンから「ぜひ延長してほしい」との要望に応えて来年1月3日まで開催する。この日も親子連れでにぎわった。

 日本一は逃したが、広島の街ではいまも祝福ムードに包まれる。広島の41年ぶりの優勝パレードが行われた市中心部の「平和大通り」には優勝をテーマにした「V7」の文字とコイが滝を上る姿のイルミネーションがともる。メッセージボードには「感動ありがとう! 来年は日本一を勝ち取りましょう!」のファンからの期待が寄せられる。

 地元百貨店「福屋」ではカープのロゴ入りバッグなど5点の観戦セット(8900円)などの福袋を用意。昨年の3倍に増やした。今月3日に2300個の予約を受け付けると、翌日に完売した。「全国から注文が相次いだ。カープ人気は底知れない」(同百貨店)。残り700個は来年1月2日に広島駅前店で売り出す。市民とともに歩んできた広島のお祝いムードはまだまだ続く。【松浦隆司】

 ◆Vへの軌跡 ベテラン新井貴浩選手が4月26日のヤクルト戦(神宮)で史上47人目の通算2000安打を達成し、チームに勢いをつけた。交流戦では4年目の鈴木誠也選手が3試合連続で決勝本塁打を放つ「神ってる」活躍で、32年ぶりの11連勝。チームを団結させたのは黒田博樹投手だった。7月23日の阪神戦(マツダスタジアム)で史上2人目の日米通算200勝を挙げた。8月24日には優勝マジック「20」が点灯。9月10日の巨人戦(東京ドーム)で2位巨人に15ゲーム差をつけ、球史に残る独走で1991年(平3)以来、25年ぶり7度目の頂点に立った。