144年の歴史を誇る老舗劇場の新たな挑戦だ。東京・明治座で昨年9月から外国人観光客などを対象にしたナイトプログラム「SAKURA-JAPAN IN THE BOX」に取り組み、16日から再びロングラン公演が始まる。歌、ダンスに日本の伝統芸能を凝縮したショーで、アニメのキャラクターが登場。プロジェクションマッピングを多用し、スマホ撮影もOKという。現在は日本人客の方が多いが、20年東京五輪まで続け、外国人観光客への浸透を狙っている。

 秋の精霊RINを大手モデル系事務所から明治座に移籍したNatsunAこと伊原夏菜(31)が演じている。出演のほとんどが殺陣の場面で、168センチの8頭身美人が躍動する。夏菜は高校時代はバトントワリング、大学でダンスに取り組んだ。端正でいて眼力ある顔立ちと、スレンダーボディーが注目され、大学卒業と同時にモデル事務所に所属。一方で舞台演劇に目覚め、自宅に稽古場を作ってまで、殺陣を学んだ。地道な努力で殺陣の評価を高めると、昨年秋モデル系事務所を退社。「SAKURA」の出演を機に、明治座所属となった。

 一芸が秀でた形となった「SAKURA」では、4人のメインキャストでただ1人、ダブルキャストではなく単独出演を続けた。16日連続出演など過酷な日程も経験したが、父で元プロ野球西武監督の伊原春樹氏(67)から贈られた言葉を手帳にしのばせ、支えにした。「『いつも全力でやりなさい』って。父の座右の銘は『全力』。疲れている場合じゃないですよね」。現役時代に苦労した父は、32歳でコーチに転身すると、屈指の指導者として西武、巨人を日本一に導いた。今年は一部ダブルキャストとなるが、夏菜の女優人生最初のビッグチャンスが、32歳を迎える年に訪れたのは運命的だ。