2020年東京五輪のゴルフ会場を巡る問題で日本ゴルフ改革会議が11日に都庁を訪れ、東京都の小池百合子知事宛に、若洲ゴルフリンクス(江東区)に見直すべきとの要望書を提出した。それに先立ち、ジャーナリストの大宅映子議長、蟹瀬誠一副議長、参院議員の松沢成文氏らが会見を行った。

 五輪会場となる霞ケ関CC(埼玉県川越市)は民間の会員制高級ゴルフクラブのため大会後、都民らが気軽にプレーすることはできず、レガシーにならないと主張。都が保有する若洲なら五輪開催中の営業補償も発生せず、一般の都民も大会後に利用できる点を指摘した。

 国会で8度、ゴルフ会場問題の質問をした松沢氏は「霞ケ関は会員制で女性差別がなされている。正会員に女性がなれない。平等性を重んじる五輪憲章に反している」と断じた。

 晴海の選手村から高速道路で移動する場合は首都高、外環道、関越道、圏央道と4つを利用しなければならず、五輪レーンを設置した場合「膨大な営業補償費を高速道路会社に払わなければならない」とも語った。

 さらに、酷暑問題も指摘。14~16年の7月30日から8月8日までの最高気温を比較し、霞ケ関CCは35・8度、若洲は31・8度と4度の差があることが判明し「日本では環境省では35度を超えると、熱中症警報を出す。外でのスポーツはやめなさいと。それで霞ケ関でできるのか。観客やボランティアを含め2万人近い人がボランティアも含めて集まる中、熱中症対応はできない。強行すれば死者が出るかもしれないと医者が言っている。狂気の沙汰だ。霞ケ関でゴルフをやるのは極めて不適切だ」と話した

 選手村から遠方輸送のため、警備費などが膨大に掛かることも問題だとし、蟹瀬氏はコスト面で霞ケ関CCと比較し「トータルでゼロが1つケタが変わって来るだろう。納税者のプラスになるのか」と疑問を投げかけた。

 16年招致の段階では若洲だった立候補ファイルが、20年招致では霞ケ関CCに変更された。組織委や東京都は観客の動線や観戦場所、放送用の土地が確保できないことを変更の理由と説明している。しかし、同会議は若洲コースに隣接する空き地に観戦用のスタンドが設置できるとし、プレスセンターである東京ビッグサイトが近距離にあるため、コース内に独自のプレス用施設を造る必要はないと指摘した。

 五輪では広大なドライバー練習場が必要だが、沖縄で例があるという海に向かって打つ練習方法や、近隣のロッテ葛西ゴルフ練習場を使う案を挙げた。

 ゴルフ会場問題が大きく注目されたきっかけは4日の大会組織委員会・森喜朗会長の発言だった。霞ケ関CCに対して「選手村への帰りは3時間はざら。選手の移動などで大きな課題がある」と指摘し、問題が解決しない場合に限り、他会場の検討も示唆していた。しかし10日、組織委の武藤敏郎事務総長が川越市周辺の宿泊施設の利用や、電車の専用車両を利用した輸送などを検討しているとし、会場変更は否定した。

 松沢氏はこの日「森会長もようやく気付いていただいたので、小池知事にも議論を進めていただいて、結論を出してほしい」と評価した。