東京・築地市場最大の業界団体で、約550の仲卸業者で作る東京魚市場卸協同組合(東卸)は1月31日、理事長選を行い、豊洲市場への移転慎重派の早山(はやま)豊理事(66)が初選出された。任期は2年。市場の移転を推進する立場の伊藤淳一理事長は、3選を逃した。理事29人の無記名投票で決まったが、投票結果は非公表とされた。

 早山氏は新理事長に選ばれた後、あいさつ。「私たちはこれから新しい執行部を決めますが、さまざまな方向性については、その中で決めて、皆さんに発表します。ただ1つだけ、私たちが築地で働く、魚を扱う市場の仲卸であること。それを大前提として、これからの方向性を話し合っていきたい」と語った。

 市場移転についての立場を聞かれたが、「個人的な私見が、組合と理事長の私見になるので」と口を閉ざした。2月6日の理事会で新執行部を結成した後、記者会見を開くという。

 早山氏は、70年の歴史を持つマグロ仲卸の2代目。マグロ仲卸業者の組合「大物業会」の会長を務めている。豊洲市場では地下水のモニタリング調査で、環境基準を大幅に上回る有害物質が検出されていることから、東卸の理事会でも移転慎重派が優勢となった。今回の理事長交代が、市場移転問題に一定の影響を与える可能性もある。

 13年2月の理事長選で、移転反対派の山崎治雄氏に代わり、推進派の伊藤氏が理事長に就任。移転反対派の支持を受けた代表者が、3期ぶりに東卸のトップに立った。【柴田寛人】