6日午前3時8分ごろ、胆振(いぶり)地方中東部を震源とする地震が発生し、北海道厚真町で震度7を観測した。ほか安平町で震度6強、札幌市で同5強など。影響で北海道全域で295万世帯が一時停電し、道内の全鉄道が運休となるなどインフラがまひした。安倍晋三首相は関係閣僚会議で、死者が9人に上ったと述べた。気象庁は「平成30年北海道胆振東部地震」と命名した。札幌市内で地震に遭った日刊スポーツ松尾幸之介記者(26)が混乱する市内の様子をリポートする。

  ◇   ◇   ◇  

サッカー日本代表の取材を終え、眠りについてすぐの午前3時過ぎ。札幌中心部のホテル3階にいた私は、下から大きく突き上げるような揺れに跳び起きた。驚いて窓の外を見ると、真っ暗な夜道に近所の住民たちが飛びだしてきていた。当初電気はついていたが、しばらくすると完全に停電。シャワーやトイレの水も流れなくなった。

余震の揺れを感じつつも、すぐに取材に向かった。停電のため開いている店はなく、かろうじて営業中のコンビニには長蛇の列。携帯電話用モバイルバッテリーはどの店も完売状態だ。仕方なく冷蔵庫が止まってぬるくなったお茶だけを片手にレジに並んだ。

海産物が並ぶ市内の中央卸売市場では、明け方から行われる水産部門の競りが中止となり、青果部門は1時間遅れで行われた。海産物店を経営する山口英幸さん(55)は「朝、競りで市場にいったら(停電で)真っ暗だった」と目を丸くした。札幌のランドマーク、さっぽろテレビ塔を指さし「32年間、店をやっているがテレビ塔の時計表示が消えているのを見たのは初めてだ」。

停電で商品を保管する冷蔵、冷凍庫も使えない。カニやウニをはじめ、今が旬のサンマなどが保存できず、氷やドライアイスで冷やしながらしのいだ。山口さんは「3日間電気がこなかったら全部だめになる。明るくないと何もできないし、今日は昼に店は閉める」と声を落とした。

市役所も行列だった。停電で携帯電話の充電ができない人へ向け、自家発電のある役所の電源と水素自動車からの電気を使い、急きょ1階に充電スペースを設置。口コミやSNSで情報が広まり、役所の外まで長蛇の列ができた。1人30分の充電を目安に約80口の充電ケーブルを用意したが、充電自体に時間がかかるためなかなか人はさばけない。開始からわずか約3時間半後の午後0時半ごろに希望者の列を締め切った。市の担当者は「こんなに集まったのは驚きました」と話した。

市内ではポンプ式の集合住宅などで水の供給もストップ。市水道局は約30カ所で水を無料で提供した。会社員の多田弘子さん(58)は「マンションなので水が出なくなった。ありがたいです」。多田さんの住む東区では4日夜に北海道を通過した台風21号の影響で、一部住居が5日朝まで停電。再び停電となり「台風の次は地震。自然は怖い」とこぼした。

北の大地を襲った大地震。夜になると、前夜はきらびやかに輝いていたススキノのネオンが消えた。真っ暗な歓楽街に、人はまばら。薄暗いコンビニは夜も変わらず、長蛇の列ができていた。ホテルの部屋も真っ暗だ。パソコンのバッテリーもついになくなり、携帯電話でこの原稿を書いている。それでも、この日聞いた被災者の方の言葉を思い出す。「全く初めての経験だけど、これでこういう時に何を準備しておけばいいのかわかった」。前向きな言葉が、一筋の光明として心に刺さった。【松尾幸之介】