平成最後の福袋商戦が幕を開ける。2019年の初売りを目前に控え、各百貨店の福袋が出そろった。都内の西武池袋本店や松屋銀座では、「平成最後」をキーワードに売り出す。従来の「お楽しみ袋」的要素は残しつつ、現在では「中身を見せ、夢を現実にする」形の福袋に変化してきた。世相を彩った流行や言葉を盛り込んだ商品に加え、「体験」「コト消費」などで各店が独自色を出している。
平成から新元号へ、流行に敏感な百貨店は早速、乗っかった。西武では5月ごろから、松屋では8月ごろから、「平成最後」をそれぞれ意識し始めたという。
平成生まれの担当社員もいる。「バブル時代」が歴史上のこととなる若手もいた。西武は20~50代のスタッフのミーティングで、世代を超えて検討した。松屋の担当者、倉科瑛さんは1989年(平元)生まれ。「何とか理解できるのは、アムラーくらいから。どんな世相だったのかをインターネットで調べたり、社内で聞き取り調査をした」と振り返る。
両店の一押しはスイーツで重なった。西武は店内喫茶「ケンジントン・ティールーム」(2月6、7日実施、各日限定50人、2019円)で、平成の30年間に流行したティラミス、パンナコッタなど15種類のスイーツを90分間堪能できる「平成スイーツブッフェ福袋」。松屋も「平成トレンドスイーツ福袋」(2019円)を前面に押し出している。洋の東西を問わず、情報化社会の発達とともに、スイーツを進化させた食の世相を振り返るにはピッタリだ。
昭和から平成になり、百貨店の福袋は様変わりした。かつては、価格の約5~6倍にあたる量の衣料品や日用品を雑多に詰め込んだ。財布のヒモが緩みがちな新年の初売りにお得感を打ち出した。何が入っているかは、家に帰って開けてからのお楽しみだった。
バブル真っ盛りだった平成の幕開け後、「中身を見せる形」になった。華やかさを押し出したり、非日常体験や夢を実現させた。新年の西暦で価格を設定して7ケタ、8ケタ単位の高額「目玉商品」にした。ホンダ「ビート」など注目を集めた新車、海に沈んだ豪華客船「タイタニック号」の財宝探しの旅、宇宙旅行なども登場した。
初売りの代名詞ともいうべき福袋には各種専門店、家電量販店、ネット業界も参戦している。「競争が年々激化している上、消費者は最初から商品を決めて売り場に並ぶ。前年の秋ごろに事前告知し、商品を明らかにすることでお客さまを早めに取り込もうとしている」(松屋銀座広報課)。
「体験」「コト消費」にも独自色が加わっている。高島屋が全国19店とサテライトショップ2店で受け付ける「目指そう未来の『さくらジャパン』! 女子日本代表選手が教えるグランドホッケー教室」(2万190円)がいい例だ。
中身が問われるだけでなく、ウキウキ、ワクワクする楽しい仕掛けも用意している。松屋銀座は今年の初売りから、20万円相当の紳士服を3万円で売り出すなど、5種類の福袋を抽選制にした。しかも、初売り日の当日に店内で公募し、当日の午後に公開抽選。今年行った落語家の桂三木助が、来年も当選者を選ぶ。夢の演出の「エンタメ性」も、福袋の要素に加わるかもしれない。