同性間の結婚が現行法で認められていない中、50代女性のカップルが17日、東京都の中野区役所に婚姻届を提出した。区からはその場で不受理となることが告げられた。2人を含む全国10組の同性カップルやその弁護団は、国を相手に、同性婚が認められないことで精神的な損害を被ったとする国家賠償請求訴訟を、2月に起こす準備を進めている。2人は「長い戦いになる」と、同性婚実現に向けて、強い決意を示した。

中野区役所に婚姻届を提出したのは、ともに団体職員で、LGBT支援団体も運営する大江千束さん(58)小川葉子さん(55)。2人は窓口で、戸籍上同性のため受理できない旨を告げられた。大江さんは「横で男女のカップルがうれしそうに婚姻届を出している。まだまだ平等はないんだなと、分かっていながらも突きつけられた」と話した。

今後2人は、他の同性カップルと集団訴訟の準備に入る。結婚できないことで特に困った経験としたのが、入院や葬式など「究極の場面」。保証人や親戚への説明などで「家族というものを突きつけられる。具合が悪いときに説明もできず『親友』と答えたんです」と苦悩の過去も明かした。

小川さんは「特別なものを求めるわけではない。ゲイやレズビアンは結婚という選択肢のスタートにも立てない」と訴えた。弁護団では、同性婚を規定する立法を求めての訴訟ができないため、法律が同性婚を規定していない「不作為」による精神的損害を被ったとして国家賠償請求の形をとる、としている。

大江さんは幼少から音楽好きで、グラムロックやクイーンを通じて同性愛を認知。高校時代に女性の親友に「友達以上の」好意を持ち、20代に「業界デビュー」した。小川さんは高校ごろ自らの好みに気づいたが「(自分で)受け入れられたのは30代。ごまかそうとした時もあった」と話す。

2人は30代でレズビアンの交流会で出会い、交際25年。大江さんは「小川さんは最初、別の女性をいいな、と思っていた」と暴露。小川さんが「漫才を求めてない。盛るよね」と笑いを誘うなど、訴訟と対極の明るさとともに、絆もうかがわせた。昨年9月には中野区の同性パートナーシップ制度1号の認定を受けた。

今はお互い「意見を戦わせることも多いが、一連託生。戦友」となった2人。国を相手に、顔も名前もオープンに。まさに「戦う」決意表明となった。