作家で僧侶の瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)さんが死去したことが11日、関係者への取材で分かった。99歳。日刊スポーツでは、2019年5月1日、元号が新しく「令和」になるのを受け、寂聴さんにインタビューをした。

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大正から令和まで、4時代を生きた作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん(96)が、令和時代を生きる女性の在り方を語った。「男は粒が小さい」と嘆きながら、女性を叱咤(しった)激励した。働き方改革にも触れた。

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-今の男性についてどう思いますか

寂聴 私、男好きなんだけど、これはと思うのがいなくなったわね。私、天才が好きなのよ。ショーケン(萩原健一)も天才だから好きだったの。型破りな人がいなくなり、男は粒が小さくなったね。小さく守ろうとするわね。それだけ世の中が治まっているのかもしれないけど、そんなことはないですよ。女もおとなしい男とか、家庭をしっかり守ってくれればいいとか、そういう男をどこかで要求しているんでしょうね

-女性についてはどう思いますか

寂聴 もっと女の人がしっかりしないとダメ。女の政治家もダメね。女の政治家がもっと頑張るというのではなく、もっと出てくるべき。全然出ないですよね。今は女の時代なんて言うけど、昔の女の方が、ずっとしっかりしてましたよね。女が押さえつけられていた時代ね。明治、大正の初めとかね、女は頑張っていましたよ

-昔に比べて、社会で女性の活躍も期待されるようになりました

寂聴 教育なんて、昔はほとんどさせてくれなかったの、女は。男にさせても女に学問はいらないと言われた時代に、女は自分で勉強していました。今は大学に行かせてもらって、十分勉強させてもらっているのに、自分のことばっかり考えて、世の中のことは考えてないよね。政治とかもね。だから、そっち方面(=政治)で、これはと思う人も出てこないじゃないの

-4月から始まった「働き方改革関連法」について、どう見ていますか

寂聴 私は働くのが好きなの。ちっとも苦にならないの。この年になっても、まだ徹夜して仕事してるんですよ。休みがいっぱいできるって、すごく気に入らないの。うちで働く人たちがどんどん休んでいくでしょ。決まりですからって。不便ですよ。でもね、若い時にパリによく行ったんだけど、夏に行くと、みんな休みを取っていないでしょう。旅行者は不便だけど、あれはいいなと思ったわね

-時間外労働の上限規制や有給休暇の取得義務化など、細かく働き方の法改正が行われました

寂聴 制度化しないと、日本人なんて気がちっちゃいから、よう休まないしね。だから、制度化してもらいたいんでしょうね。私みたいに働くのが好きな人は働いて、嫌な人は働かなくていい。やってみたらいいと思う。休んで、ちょっと旅行でもするくらいのことでしょ。あとはくたびれてお金が減るだけ。ああ、しんどいと思いますよ

-新しい時代を迎えて、変わってほしいことは

寂聴 政治がダメね。見ていて、これはという政治家がいなくなった。先日、テレビを見たら、(衆院補選で)自民党が負けたって。いいんじゃないかなって。ちょっと変わらなければいけないでしょうね。政治がダメということは、選挙でもバカばかり入れるから、ダメになっているんだから。やっぱりそれも自分の責任。面倒でも選挙に行かなきゃいけないですよね

-今後、期待することを教えてください

寂聴 日本は島国で、外国人に対して、観光でいらっしゃいだけど、ちゃんと受け入れるような気持ちがまだないですよね。考えを変えないといけない。人類は一緒ですよ。【取材・構成=近藤由美子】(おわり)

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◆瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)本名瀬戸内晴美。1922年(大11)5月15日、徳島市生まれ。東京女子大卒。学生結婚した夫と北京へ。引き揚げ後の50年に離婚。文筆生活に入り、「田村俊子」「女徳」などで人気作家に。「夏の終り」で女流文学賞受賞。73年中尊寺で得度。74年京都・嵯峨野に寂庵を構える。「花に問え」「白道」「現代語訳源氏物語」「場所」など著書多数。06年文化勲章受章。