看板は輝いたままだった。国内最大の競走馬セリ「セレクトセール2022」が11日、北海道苫小牧市のノーザンホースパークで行われた。初日の1歳部門では20年に種牡馬を引退したハーツクライ(牡21)の最終世代6頭が登場した。

今年、ダービー馬ドウデュースを送り出した父の子どもは半数の3頭が億超え。高い人気を保ったまま、上場馬全てに値がついた。(落札価格はすべて税抜き)

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最後の最後までブランド価値は高かった。太陽が上がりきった正午、ハーツクライ産駒のスパニッシュクイーンの21(牡)は壇上にいた。20年限りで種牡馬引退した父の最終世代。購買希望者のつばぜり合いは3分にも及んだ。5000万スタートのビットは3倍以上の1億7500万円で決着した。落札したのはサイバーエージェントの藤田晋社長。新興馬主も最高級の評価を与えた。

現1歳世代は35頭。希少な上場馬6頭のうち、3頭が“億の壁”を突破した。今春、産駒のドウデュースがダービー馬となったことで改めて偉大さが示された形だ。社台スタリオンステーションの吉田照哉代表取締役は「年を取ってからも頑張ってくれた。今日の子どもも走ってくれると思う」と明るい将来を予言した。

現在は功労馬として社台スタリオンステーションにて余生を送る。種牡馬としての最晩年は1日1頭ずつ7日間種付けを行い、その後1週間の休養を挟む2週間タームの生活を主に送っていた。後肢の踏ん張りが利きにくくなり、アクシデントを避けるための最大限の配慮を重ねた。種付けのタイミングと発情時期と重なった牝馬はそれだけでも、運がいい。同SSの徳武英介氏は「元気に過ごしていますよ。脚さえケアをすれば、長生きしてくれると思います」と話した。21歳。老け込むのはまだ早そうだ。

偉大な名馬の子どもに有力馬主たちも夢を乗せた。金子真人オーナー(名義は金子真人HD(株))はアレイヴィングビューティの21(牡)を1億7000万円で落札。同産駒ではG1未勝利のオーナーもラストチャンスがある。クラブ法人のキャロットクラブもインクルードベティの21(牡)を5000万円で手に入れた。吉田代表取締役は「功労馬ですよ、本当に」と感謝の思いを口にした。長らくセリを支えた名種牡馬。ラストイヤーも盛り上げに一役買った。【松田直樹】