走って走って走りまくれ! 阪神の秋季キャンプが2日、高知・安芸で始まり、今季3勝と苦しんだ藤浪晋太郎投手(23)が初日から激走した。金本知憲監督(49)が見つめる前で地獄のインターバル走に臨み、さすがの馬力を披露した。完全復活へ向けて下半身を強化するとともに、ブルペンでは従来よりも握りを深くした「大魔神フォーク」も試投。来季逆襲へのスタートを切った。

 昼下がりのサブグラウンド。遠く離れていても激しい息づかいが聞こえてくるようだった。球場のポール間をイメージした、くの字のコースを180メートル走×8本。それをなんと2セットも走った。合計距離にして2・8キロ。設定タイム30秒のカウントダウンが響くなか、小野、岩貞と一緒に参加した藤浪は、何度もゴールになだれ込んだ。90秒のインターバルをへて、再びスタートの笛が容赦なく鳴る。金本監督がバットを手ににらみを利かす状況で、地獄のような40分間が経過した。

 指揮官の思いがメニューに透けて見えた。投手陣のランメニューについて「トレーニングと並行してやっているが、両方やればいい。トレーニングができない人はランニングを多めにやるべきだと思うし」と意図を説明した。今季、本来の力が発揮できず苦しんだ藤浪、岩貞の両腕。藤浪はレギュラーシーズン終了後のみやざきフェニックス・リーグ、CSファーストステージ第3戦の中継ぎ登板と、復活の道筋は見えてきている。ただ、来季へ向けた土台作りは今しかできない。そのスタートが秋季キャンプ初日の激走だった。

 過酷なメニューだったが、藤浪はさすがの馬力で設定タイムをすべてクリアした。「しっかりと与えられたメニューをやりたい」と涼しい表情。ゴール後へたり込んだ岩貞とは対照的だった。

 藤浪はブルペンでも新たな試みにチャレンジした。これまでのスプリット気味のフォークではなく、より落差のある、元マリナーズ佐々木のような新フォークを試投。藤浪といえば、160キロに迫る直球とキレのあるカットボールが代名詞だが、「三振を取る決め球ではある」(藤浪)と改良に着手した。このままでは終われない。走って投げて来季は屈辱を晴らす-。完全復活に向けた取り組みが南国土佐で始まった。【桝井聡】