<ヤクルト8-15阪神>◇6日◇神宮

 虎の韋駄天(いだてん)が陰のヒーローだ。途中出場の阪神田上健一外野手(26)が負の流れを変えた。3点を追う8回、先頭で石山のスライダーを左前へ運んだ。一挙6点奪った逆転劇を演出。7回の同点機に新井が併殺打、直後に2点を失っていた。諦めかけそうな嫌なムードを、育成からはい上がってきた5年目が振り払った。

 指揮官は開口一番、殊勲者に挙げた。

 和田監督

 2点取られたあとの先頭の田上がね。あのヒットが大きい。もう1回いこう!

 という気にさせてくれたね。

 出番は4点ビハインドの6回、2死無走者から八木に「左対左」の代打だった。50メートル走5秒7の俊足で代走起用が多い中、貴重な打席。高めを左翼線へはじき返してプロ初の二塁打にした。そのまま右翼守備に就くと、7回2死一、三塁でミレッジの飛球をフェンスにぶつかりながらジャンプして好捕。ダメ押しの2点を失うピンチをファインプレーで救った。

 田上

 普段あまりない代打だったので。試合に出ていない中で結果を出したかった。(守備は)風もあって伸びるのも分かっていたし、しっかり捕れて良かった。

 昨年11月に小学校の同級生だった、なつきさんと結婚した。高知・安芸キャンプでは掛布DCらに積極的に質問。平田2軍監督を「あんな姿見たことないな。結婚して、やってやろうという気持ちが強いんやろ」と驚かせた。今オフにも挙式を予定する新婚さんは「続けていきたい」と力を込める。ラッキーボーイと呼ぶのは失礼な26歳が、大乱戦の中でキラリと光った。【近間康隆】