館内に、落胆の深いため息が漏れた。逆転優勝の望みを、せめて千秋楽まで…と願ったファンの願いは裏切られた。

 大関稀勢の里(29=田子ノ浦)は史上最多タイの61本の懸賞が懸かった結びの一番で、横綱鶴竜(30=井筒)に寄り切られて連敗を喫した。目前で横綱白鵬(31=宮城野)が全勝を守っていたため、千秋楽を待たずして優勝が決まってしまった。

 支度部屋に戻った大関は「あーっ!」「くそっ!」と声を張り上げた。「いいですか、すみません」と報道陣も遠ざけた。寄り切られた際に土俵に打ちつけた左すねは腫れており、顔を何度もゆがめた。唇をかみ、首をかしげる場面もあった。

 14日目、千秋楽に残されていた2横綱との取組は、優勝争いだけではなく、今後の綱とりをどうつなげるか、大きい意味を持っていた。朝には「最後まで、しっかりと集中してやることです」と話していた。それだけに、この1敗の重みを嫌というほど痛感していた。